転職サファリ おもしろコンテンツ 元◯◯◯がつくるラーメン

元サーフボードクラフトマンがつくる白トリュフ塩ラーメン

東京

元サーフボードクラフトマンがつくる白トリュフ塩ラーメン

ボード職人で育んだ職人気質を
ラーメンの世界で貫く

ミシュランが認める
行列必至の実力店

店の前に生じる行列は、平日でも日常茶飯事。週末ともなれば50人、時に70人が並び、夜の営業を待たずに完売、店じまいとなる。

その列の先にあるのが「BumBun BLau Cafe with BeeHive(ブンブンブラウカフェウィズビーハイブ)」(以下、Bum Bun Blau)だ。

2008年に千葉県・九十九里で「Bee Hive(ビーハイブ)」として開業するや、その年に発行された首都圏版のラーメン本で塩ラーメン部門1位獲得。
以降も「超らーめんナビ」の塩部門で全国一位に輝くなど、関東のラーメンシーンを牽引する実力店としてその名が知れ渡っていく。

その後、東京都内へと進出。2014年6月に、“カラダに良くて美味しい”をコンセプトにした飲食・美容店「BumBun BLau Cafe with BeeHive」を構える。

天然素材を取り入れたラーメンのほか、今やラーメンと並ぶ看板メニューとして絶大な人気を獲得するかき氷、さらには女性専用の本格リラクゼーションやフェイシャルマッサージが受けられるエステサロンを併設。

近年では、ミシュランガイド東京における2015年から3年連続のビブグルマン選出も記憶に新しい。

白トリュフ塩ラーメン

白トリュフ塩ラーメン

ラーメンと並ぶ人気のかき氷(ストロベリーエスプーマ)

ラーメンと並ぶ人気のかき氷(ストロベリーエスプーマ)

看板メニューの「白トリュフ塩ラーメン」は、青森シャモロックでとった出汁を生かした無化調スープに、5種類もの厳選した塩をブレンドし、味を調える。麺は自家製。
スーパーフードとして知られるスピルリナを練り込んだ翡翠色の麺が澄み切った塩スープの中で優雅に映える一杯だ。

それだけではない。丼から立ち上る白トリュフの贅沢な香りもまた記憶に残る。
一口ごとに幸福が鼻腔を抜け、食べ終えるのが惜しくなっていく。

高校生で決断した
好きを仕事にする生き方

オーナーシェフである斎藤直樹さんは、10年前まではラーメンとは全く関係のない世界に生きていた。中学生の頃にサーフィンを始め、進学校に通いながらも、サーフィンは続けていたのだという。
高校2年生になり、いよいよ進路を考えるという時に、斎藤さんは自分にとって、何が一番幸せなのかを考えた。

「最も大きかったのが海に入りたいという思いでした。時間だけは誰もが平等に与えられたものです。そんな貴重な時間を使う中で、生活のためにやりたくもない仕事をする、つまりオンとオフを切り替えるような生き方はできっこない。だから好きなことを仕事にしようと決めました」。

サーフィンをしながら、なおかつ手に職をつけることを考え、高校を卒業した斎藤さんは九十九里にあったサーフショップに就職。サーフボード作りを学びつつ、朝晩をサーフィンの時間に充てた。
元々、ストイックに物事を突き詰めていく性分だったこともあり、サーフボード作りにおいてもメキメキと頭角を現す。

その当時のボード作りは基本的には分業制で、それぞれのセクションにその道の職人がいたものだが、そんな中で斎藤さんは「忙しい店だったから、どんどん仕事を任されたんです」と謙遜しながらも、全セクションをマスターし、ついには1人でゼロから一本のボードを作れるようになった。

約8年間勤務した後、斎藤さんは26歳でフリーランスのサーフボードクラフトマンとして独立。職人としての技量は日々、積み上がっていき、その当時、日本でトップクラスのボード職人が1日8本仕上げるところ、斎藤さんはその倍にあたる16本を完成させていた。

「どうすれば段取りよくできるか。ずっと考え続けてきました。全ての工程において全力を尽くし、その上で勘所を見極め、力の入れ方における強弱も意識する。そうやっているうちに、スキルだけでなく、速度も上がっていきました」。

ボードもラーメンも
同じ“モノづくり”

その後、時代の流れとともにサーフボードの製造から、修理、メンテナンスを主体としたスタイルへと切り替えた斎藤さん。
オリジナルのサーフボードを販売しつつ、修理やメンテナンスの待ち時間に利用できるようなビリヤード、ダーツを備えたカフェを営むようになる。
これが斎藤さんにとって転機となった。

ショップを運営する中、どうしても冬場に客足が鈍ってしまうため、冬でもお客に喜んでもらえるようなあたたかい料理を提供しようと思い立つ。
それがラーメンだった。

「もちろん、ただのラーメンでは、お客さんは振り向いてくれません。東京から往復分の有料道路の料金を払い、なおかつガソリン代も使い、わざわざ一杯のラーメンを食べに来てもらおうというわけですからね。ここでしか食べられないようなオリジナリティ高い一杯でなければ、作る意味がないと思いました」。

サーフボード作りも、ラーメン作りも斎藤さんにとっては同じ“モノを作る”こと。やると決めるや、徹底して試行錯誤した。

ボードの製造工程を一つひとつ見直していくように、ラーメンを構成する要素を紐解き、食材一つひとつがどのような味、香り、質感があるのかを体に覚えさせ、理想の味を構築していった。

「自分が100%満足できる状態でないとお客さんには提供しない」という斎藤さんの言葉どおり、Bum Bun Blauで提供されている塩ラーメンは、完成から10年経った今でも、基本的な味の設計は変わっていない。

道具の開発
そして世界へ

ただし、変わらないといっても全部が全部ではない。確かにレシピ自体は変わっていないが、そのレシピを形にする技術は、さらに向上するように努めているのだという。

「ラーメンは不思議な食べ物で、同じ材料を使って、同じようにスープを取ろうとしても、ほんの少し、骨を入れるタイミングをずらしたり、温度がほんの少し変わったりするだけで、別物になるんです。いつ丼に注ぐのか、あるいは注ぐスピードが違うだけで、注がれるスープの温度は変わりますから。麺だって湯切りの仕方でガラリと変わりますよ。僕は麺を茹でる時にタイマーは使いません。だって、1本1本違う麺ですから。箸に伝わる感触に対して五感を研ぎ澄まし、茹でている間の麺の泳ぎ方で、ジャストな時間を判断します」。

斎藤さんは現在、ミシュランガイド掲載をきっかけに縁ができた中国の飲食企業と業務提携し、彼の地で展開する飲食店のためにラーメンづくりを指導している。

今後は中国大陸以外へも展開するビジョンもあるのだという。また、メーカーと共に1度単位で温度管理できる寸胴鍋の開発にも着手した。

「元々、ボードという道具づくりをしていましたから、良い道具がもたらす意味も人並み以上に理解しているつもりです」。

店休日には海外への出張を入れるというように、全く休みを取らない斎藤さんだが、そう話す口調に悲哀のトーンは一切ない。むしろ夏休みの出来事を楽しそうに話す子供のようでもあった。

「好きなことをしているというのが全てですよ。時間は人類に平等に与えられたものですから、例えば、目の前の1分をどう使うか。その積み重ねだけです」。

text:Yuichiro Yamada [KIJI] /
取材協力:BumBun BLau Cafe with BeeHive

DATA

スープの透明度
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  • ☆
  • 4.5
健康への追求度
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  • ☆
  • 4.5
素材のこだわり度
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  • 5.0
前職の意外度
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  • ☆
  • 4.0
転職時のラーメン研究度
  • ★
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  • ★
  • ★
  • 5.0
店主の職人度
  • ★
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  • ★
  • ★
  • ★
  • 5.0

店舗情報

BumBun BLau Cafe with BeeHive
(ブンブンブラウカフェウィズビーハイブ)

〒142-0064
東京都品川区旗の台3-12-3 J-BOXビル2F

電話
03-6426-8848
営業時間
12:00~LO14:30、18:00~LO22:30
(日祝のみ12:00~LO15:30)
※売り切れ次第終了
定休日
水曜

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WRITER

山田 祐一郎

山田 祐一郎

日本で唯一のヌードルライターとして活動。著書に「うどんのはなし 福岡」。2017年に麺索アプリ「KIJI NOODLE SEARCH」をリリースした。モットーは1日1麺。
webサイト[KIJI]http://ii-kiji.com/では日々の食べ歩きを記録したwebマガジン「その一杯が食べたくて。」も連載中。

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