誕生秘話

コロン太編

僕の名前はコロン太。

大学を卒業してから株式会社ブラッグズに入社し、営業マン一筋で8年間勤務しています。

入社前から株式会社ブラッグズはブラック企業だとは噂では知っていました。ですが8年前はちょうど就職氷河期で、なかなか面接先から内定が貰えず仕方がなくこの会社に入社しました。

どのくらいブラック企業かというと・・・・。

  • 月に200時間残業。残業はタイムカードを切ってからさせられる。
  • 日常的に罵声が聞こえるような環境。
  • 厳しいノルマがあり、達成できなければボーナスの大幅カットと反省文の提出。
  • 40℃近い熱があっても休ませてもらえない。

など過酷な労働環境とストレス、プレッシャーが原因で、体を壊したり心の病気になって退社してしまう人が多くいます。

新入社員の頃は嫌で嫌でたまりませんでしたが、今は過密スケジュールやプレッシャーのため転職をしようだとか、そういう発想を考える気力もありません。

この男はミネーヤ。

ミネーヤは同じ時期に入社したいわゆる同期というやつです。性格が悪くデリカシーもないので、嫌われています。

元営業部でいい加減に仕事をしていた為、仕事の実力は殆どありません。

ですが同僚の手柄を横取りする才能と、上司にゴマをする才能は天才的でドンドン評価を上げていきました。

今では同期の中で一番の出世頭で、広報部の係長に抜擢され、毎日、偉そうにしています。

ミネーヤに限らずウチの会社は評価基準が曖昧で、上司や社長のお気に入りか否かで出世が決まり会社内では不満が溜まっています。

よっ!相変わらず真面目に働いてるな。
う、うん。。(うっとうしいなぁ早くどっか行かないかな)
いやー。合コンで知りった女の子と連絡先を交換しようと思ったら、携帯を会社に忘れた事に気づいてさ~キーキッキw
そっか・・それは災難だったね。
タクシーに女の子待たせてるんだけど、どんな子か聞きたいだろ?すげー可愛いぞ。キーキッキ
い、いや。忙しいし今度でいいよ。
あっそ。お前ら本当に仕事大好きだな。ばかじゃねーの?こんな夜遅くまでご苦労なこった!じゃーな。

残業で夜遅くまで仕事を頑張っている僕達をバカにして、ミネーヤは去っていきました。

・・・・チッ。

他の同僚からの舌打ちの音が聞こえた。ミネーヤのせいでどんよりした社内が、ますます重い空気になってしまいました。

翌朝

僕に激高している男はゴン課長。直属の上司です。

ゴン課長は発注書のミスについて怒っているけど、実はゴン課長の指示通り作成しています。自分のミスを部下に押し付けてくるのは日常茶飯事です。

他の同僚も「あーまたか」と思っているんだろうなぁ。

ったくよ!お前みたいなバカ社員が部下で、クタクタだぜ
・・・・。
ほーら。お前のせいで、会社の雰囲気が悪くなっちまっただろが!あん?
す、すみませんでした。

今日はゴン課長の機嫌が悪く、必死に謝罪し頭を下げたが彼の怒りは収まらないようです。

土下座しろや
はい?
土下座しろって言ってんだよ!ボケー!!
は、はい!

ゴン課長はゴミ箱を蹴っ飛ばし同僚にも謝罪するように要求しました。

責任とってお前が取引先に謝ってこいよ!

そう吐き捨てるとゴン課長は日課のネットサーフィンをはじめました。

その後、ゴン課長がミスの被害を受けた取引先にアポをとりつけ、明日の朝9時に僕が行くことになりました。

この取引先は遠方にあるので、9時に行くためには始発の新幹線で行く必要があります。怒られて土下座させられた事、明日は早朝に起きなければならないことが決まった事。すべてにうんざりして今日も1日憂鬱な気持ちで仕事をしました。

その日の夜
翌朝

結局ほとんど寝れませんでした。

寝不足でフラフラになりながらも始発に乗る為、駅に急いで向かわなければなりません。

「バカヤロー!死にてーのか!気をつけろ!」

トラックの運転手はそう言って去っていきました。

大丈夫ですか?早朝とはいえ、ここは交通量が多いから気をつけた方がいいですよ。
す、すみません。助かりました。あなたは命の恩人です。
体調悪そうです。大丈夫ですか?
実は、会社が色々大変で・・・。

たまたま同じ駅に向かう途中だったので、道すがら僕がブラック企業に勤めていることを話しました。

僕を助けてくれた人はコーディさんという名前で、転職コーディネーターという仕事をしているそうだ。

なるほど。それはひどい会社ですね。私も昔、ブラック企業で働いていたことがあるんですよ。
そ、そうなんですか。
今思えば、なんでもっと早く辞めなかったのか不思議です。きっと日々の生活に心が疲れ果てて、考える余裕がなかったんでしょう。
・・・・。
コロン太さんも体や心が壊れてしまう前に早く辞めたほうがいいですよ。私でよければ力になります。では、ここで。

そう言ってコーディさんは名刺を僕に渡し去っていきました。

(すごくいい人だったなぁ。話しやすいし、ついつい何でも話してしまった。)
その日の夜

自宅に戻った僕は、コーディさんに言われた事を思い出していました。

「早く辞めたほうがいい。」

でも再就職先がみつからないかもしれないし、辞めたら取引先や同僚にも迷惑がかかる。そして何より就職したことを喜んでくれた親に顔向けできない。

会社を辞めたいと思っているけど、これって「心の弱さからくる逃げ」じゃないのか?

と葛藤していました。

そんな事を考えていると、あるニュースが僕の目に飛び込んできました。

ブラック企業に勤めていた新卒の女性が、自殺をしてしまったらしい。アナウンサーが自殺してしまった女性の遺書や日記を淡々と読み上げていました。

アナウンサーが読み上げている自殺してしまった女性の遺書や日記の内容が、自分が今現在経験していること、日頃から思っていることがソックリで、気がついたら体が震えていました。

遺書や日記を読み上げた後、自殺してしまった女性の母親がインタビューがはじまって、娘の異変に気づいてあげられなかったと、せっかく入社できたんだからもっと続けるようにと会社勤めを強要してしまったことを後悔し号泣している。

ニュース映像を見て、僕の頭の中にある霧のようなモヤモヤがスッと消えました。

(あぁ僕は今の会社によって作られた、歪んだ価値観を正しいと信じ込んでしまっていた。)

今日から僕の転職活動がはじまりました。これから大変なこともあるかもしれないけど、親切なコーディさんのアドバイスを良く聞けば大丈夫だと思います。いい転職先を見つけて楽しい毎日にする為に頑張ります!

ウサギーヌ編

私の名前はウサギーヌ。新卒で株式会社ブラックスに入社して5年が経ちました。

入社した頃は憧れの広報の仕事に就けて毎日仕事を覚えるのが楽しく、やりがいを感じていました。

自分で言うのもなんですが、同期の中でも仕事はできる方だし、取引先からの評判も良く「このまま頑張れば、憧れの海外事業に抜擢されるかも!」なんて思っていたことも。しかし現実はそうはいきませんでした。

私が入社した株式会社ブラックスは、男性がメインの会社。入社して一通りの仕事を経験した後はキャリアアップをしている実感がありません。

朝礼で出世を祝われている彼は1年後輩の男性社員。本日付けでチーフリーダーに就任し、私の上司になりました。

彼の出世のきっかけは「企画したプロジェクトが採用され、クライアントから好評価を得たこと」です。本来なら私も心から彼の昇進を祝えるはずでした。

(私も同じテーマで同じ内容の企画書を出してたんだけど…)

彼女たちは私の同期や、同年代の社員です。入社時は仲が良く、終業後に飲みに行ったり、休日に出かけたりすることも多かったんです。しかし職務内容や仕事に対する考え方やが違うということもあり、どんどん距離ができていきました。

昔は終業後にセクハラ係長の悪口を言ったり、一緒にカラオケに行ったり楽しかったな…。

今では社内で顔を合わせれば挨拶をするくらいで、プライベートな会話をすることはありません。いつの間にか書類の名字が変わっていて、それで結婚を知ったこともありました。

女性社員「あ…今からごはん食べに行くんですけど~、ウサギーヌさんも行きます?」
別の女性社員「でもウサギーヌさんは忙しいから~。」

みなさんで行ってきてください。
おれが相手してやるよ、デへ。
キャ!
いつも打ち上げで使う居酒屋でいいよね?
まだ仕事が残っているので~(誰がお前なんかと飲むか!)
遠慮しなくて良いのに~、寂しいんでしょ?
またの機会にでもー(大きなお世話!)

この人は別の営業部係長のミネーヤ。女性社員を見かけたら意味もなく話しかけてきて、隙あらば肩や腰を触ろうとしてくるセクハラ係長です。

ううう、触られた肩が気持ち悪い~!!!
その日の夜
先輩、海外生活楽しそうだなぁ。「いいね」しておこっと。あー、それにひきかえ私は何をやってるんだろう…。

彼女は3歳年上の会社の先輩。入社して右も左も分からない私に仕事の基本を丁寧に教えてくれた、とても仕事ができて頼れる先輩です。先輩がいたからこそ、仕事が辛いときもがんばることができました。

しかし先輩は一昨年、地元に戻りたいという理由で会社を辞めてしまいました。退職前に先輩が教えてくれた本当の退職理由は、「この会社では女性は評価されないから」でした。

入社一年目ではこの退職理由にピンと来なかった私ですが、最近になって先輩の言っていた意味がよくわかるようになりました。

結局先輩は地元にもどらず、外資系の会社に入社。今ではカナダのバンクーバーで働いています。その姿は私には眩しすぎるものでした。

忘れもしません!このボツ付箋が貼られている企画書は、先輩に指導してもらって練りに練った私の企画書。後輩男性が出世したきっかけとなった企画書と、まったく同じ内容です。

彼の企画が通ったとき、私は部長に確認しました。以前私が提出した企画書とどこが違うのか、と。しかし部長から言い渡された言葉は「まだ読んでなかった」でした。

私が企画書を提出したのは1年前。部長が私の企画書を利用して、後輩男性の手柄にしたのではないかという疑惑が浮かびましたが、訴えるとしても証拠がありません。

私が徹夜して書き上げた企画書なのに。

もうこんな会社、今すぐに辞めてやる!

荒ぶる私とは裏腹に、転職エージェントのコーディさんはゆっくりと丁寧な口調で私に話しかけます。

落ち着きましょう。今はまだ会社を辞めるときではありません。
どうしてですか?
どんな転職をしたいですか?
とにかく今の仕事を辞めて他の仕事に就きたいんです。
そうですか。ではウサギーヌさんの求める仕事の条件とは何ですか?
それは…えっと(嘘でしょ。簡単な質問はずなのに即答できないなんて)
質問を変えましょう。給与、職場環境、評価制度、仕事内容、会社の経営方針、待遇など。仕事に求めるものは人それぞれですが、今この場ですぐに優先順位をつけることができますか?
…………(わからない。私は転職してどうなりたいんだろう?)
宿題を出します。数年後、転職してどんな自分になりたいか考えて来てください。1週間後にまたお会いしましょう。
私が知らなかっただけで、世の中にはこんなにたくさんの仕事があるんだ!

私は面談の最後にコーディさんが掛けてくれた言葉を思い出していました。

「仕事を辞めたいという理由だけで闇雲に進んで転職先を決めていたら、また同じことの繰り返しになってしまうかもしれません。時間をかけて考えてみてくださいね。」

コーディさんに会うまでは「今の仕事をやめたい」ただそれだけ。私は感情的になるだけで、自分がどんなスキルを磨きたいのか、どんな評価制度なら納得できるのかなんて何も考えていなかったのです。

私、自分がどんな転職をしたいかわかりました!コーディさん!
数年後に「あのとき転職して良かった」と心から思えるように、絶対に転職を成功させます!
コーディさんと面談のときにペンを忘れちゃったよー!
ウサギーヌと申します。コーディさんとの面談に参りました!
コロン太さん、ペン忘れていったみたいだ。受付に届けなくちゃ
あれ?あなたは!
営業部のコロン太さんじゃないですか!
ひょっとして、ウサギーヌさんも転職ですか?
コロン太さんも転職するんですね!
お互いがんばりましょうね!!

こうして転職コーディネーター、コーディと共に2人の転職活動が始まりました!

ネミ編

私はネミ。出産を機に仕事を辞め、今は、子育てしながら働ける会社を探しています。

以前は「株式会社ブラッグズ」という会社で、営業事務をしていました。

忙しい営業社員のサポートが私の役目。電話応対やデータ入力、ファイリングなどの作業はもちろん、先を見越して必要書類を準備しておいたり、PCのスキルを活かしてプレゼン資料を作ったり。

常に周囲に気を配りながら営業社員をサポートし、業務を円滑に進めるのは、おせっかいな私の性格にとても合っており、やりがいも感じていました。

そうやって、いつも夜遅くまで会社のために頑張っていたのです。妊娠でつわりが始まるまでは・・・。

1年前

1年前のことです。あの時はトラブルが続き、連日夜遅くまで働いていたので、ずっと寝不足状態でした。

もともと身体は丈夫で、少しくらい体調が悪くても気にしていなかったのです。しかしあまりにも頭痛やだるさがひどく、病院に行ってみたところ、なんと妊娠が発覚。予想もしていなかったので驚きましたが、夫と2人で大喜びしました。

でも、会社に喜びを分かち合える同僚はいませんでした。上司には少し落ち着いてから報告して出産・育児休暇をもらおうと、いつも通り残業もこなしていました。でも、だんだんとつわりが悪化してしまい・・・。

すみません、体調が悪いので、早退させてください。
えっ?またかよ。最近どうしたんだお前?俺が相談に乗ってやるよ、2人っきりで。ヘヘ。
実は私、妊娠してるんです。それで最近吐き気がひどくって。
・・・は?!マジで?
みなさんにご迷惑をかけて申し訳ないとは思ってるんですけど・・・。今後早退させていただくことが多くなると思います。申し訳ありません。
へー。そりゃーよかったじゃねーか。ま、そういうことなら、早退と言わず早めに退職届出してくれよな。他のヤツらにも迷惑かかるから

ショックでした。これまでも、ウチの会社はもしかして「ブラック企業」なのかな、と思うことは多々ありました。でもまさか、妊娠を理由に、一方的に退職を迫られるなんて。

次の日も通勤途中に電車の中で気分が悪くなり、途中の駅で降りて会社に出社が遅れると連絡。体調が落ち着いてから出社しました。

自分の席に行ってみると、夜までに終わらせる予定でデスクに置いてあった書類が見当たりません。

係長。机の上にあった私の書類がないのですが、何かご存じですか?
あー、それはもう別のヤツに頼んだ。この忙しい時に迷惑かけるような人間に、仕事なんて任せられるかよ。なんならもう帰ってもいいぞ

確かに早退、遅刻と立て続けに会社に迷惑をかけたのは事実です。でも、理由も伝えてあるのに、あんな冷たい態度を取られるなんて。

女子社員のみんなも、早退や遅刻のたびに、私の業務が彼女たちに回ることが不満だったのかもしれません。遠巻きに見ているだけで、誰も声をかけてすらくれませんでした。

私はこれまで、会社のため、みんなのためと思って、一生懸命サポートをしてきたのに。私の仕事って一体何だったのか、情けなくて悔しくて、涙が出ました。

仕事も任せてもらえないし、人間関係もうまくいかない。このままでは、お腹の赤ちゃんにも自分の健康にもよくない。もう辞めるしかないと思い、退職届を出しました。

あのときは本当に辛かったな・・・

前の会社では嫌なこともあったけど、やっぱり家でじっとしているより、社会に出て役に立ちたい。子どもの将来を考えると、若いうちにもっとお金も稼いでおきたい。

とはいえ、子どもがいるので仕事探しもままならず、求人情報をもっぱらスマホで探す毎日。

ある日、働くママ向けの仕事を紹介している転職エージェントを見つけました。「ワーキングママを応援」という文字を見て、嬉しくなりすぐに会員登録しました。

ここならいい仕事を紹介してもらえるかも!

登録して1時間ほど経った頃、転職エージェントから電話がかかってきました。

私、子育てをしながら働ける会社を探しているんです。
そうですか。当社では、女性が子育てと仕事を両立させて活躍できる、そんな企業をたくさんご紹介できますよ。
どうかよろしくお願いします。
まずは、あなたのことを色々と聞かせてください。

私の声に元気がなかったせいでしょうか。電話では面談日を決めるだけだと思っていたのに、転職エージェントのコーディさんは、とても親身になって話を聞いてくれたのです。

コーディさんが親身になってくれたのがうれしくて、これまでの仕事内容や退職理由だけでなく、上司のセクハラや深夜残業、妊娠を理由に退職を迫られたこと、早退や遅刻を疎まれ、妊娠を喜んでくれる同僚もいなかったことまで打ち明けていました。

そんなひどい会社は辞めて正解です。お子さんのおかげで、ブラック企業との縁が切れたんです。ネミさんはラッキーですよ。
そう言われるとちょっと気が楽になります。

そして、後日転職エージェントのオフィスで面談する約束をし、電話を切りました。

誰にも話せなかった悩みを聞いてもらえて、なんだかすっきりしました。

転職エージェントの約束の日。コーディさんが子ども連れでもOKだと言ってくれたので、子どもをベビーカーに乗せて面談に。

あらためて、コーディさんに今の自分のスキルや希望、譲れない条件などを詳しく話しました。良さそうな求人情報もいくつか見せてもらい、希望が見えてきました。

ワーキングママの求人って、意外にあるんですね。
今は託児所の設置をしたり時短勤務などの制度を整えたり、子育て中の女性を応援してくれる会社も増えています。ネミさんの希望の会社もきっと見つかりますよ。一緒にがんばりましょう!
どうかよろしくお願いしますっ!