社会保険労務士ってどんな仕事?仕事内容や年収、転職ポイントも解説
「社会保険労務士の資格や仕事に興味がある人は多いのではないでしょうか。でも、社労士が何をしているのか、実のところよくわからない、という人もいますよね。
また社労士資格には、「難しい」「簡単には転職できないのでは?」というイメージも。
社労士の仕事は、社会に企業や労働者がいる限り必要です。転職サイトや転職エージェントをチェックしてみると、社労士関連の求人もたくさんあります。
転職には年齢がネックとなりがちですが、社労士の資格取得者には30代以上が多く、30歳を過ぎたから転職が難しいということでもありません。
この記事では、社労士の仕事内容から給料、資格などについて解説していきます。社労士への転職についても説明するので参考にしてみてください。
社会保険労務士にしかできない業務と仕事内容
社会保険労務士の仕事は、簡単に説明すると社会保険や労働に関するもの。資格がないと社員以外では行えない業務もあります。
社労士の業務は3つに分類されている
社労士の仕事は大きく3つに分類され、法律の条項から「1号業務」「2号業務」「3号業務」と呼ばれています。
「1号業務」は、申請書作成や手続きの代行など。社労士の独占業務となっています。
- 法令に基づいた申請書類の作成
- 申請書類の提出手続きの代行
- 事務代理
「2号業務」は主に帳簿書類を作成する業務です。労働保険や社会保険など、各種法令に基づいて作成する帳簿書類を作ります。これも社労士の独占業務です。
「3号業務」はコンサルティング業務で、相談・指導を行います。年金や労働トラブルに関する相談受付などが当てはまります。
この3号業務は、社労士の資格がなくても行えます。しかし社労士なら確かな知識があると信頼されてるケースが多いのです。
社労士には「勤務社労士」や「開業社労士」という違いもある
社労士は、働き方によって「勤務社労士」や「開業社労士」と呼ばれます。
「勤務社労士」とは、その名の通り、企業や社会保険労務士事務所などに勤務する労務士のことです。
社会保険労務士事務所で働く場合、書類作成よりは相談窓口での相談、指導がメイン。
企業の場合は、相談ではなく書類作成や手続き業務がメインで、以下のような仕事を行います。
- 給与、健康保険料の計算
- 会社に必要な帳簿作成
- 社会保険等の手続き
この他、定年を迎える社員の年金相談を勤務社労士が行っている企業もあります。
一方「開業社労士」とは、独立して自分で社労士として働く人のことを言います。
いきなり開業社労士になるのではなく、ある程度の実績を積んだ人が独立するパターンがほとんどです。
開業社労士の場合、より多くの仕事をこなしたり、単価の多い仕事を受ければ収入は高くなります。しかしクライアントも自分で見つけなくてはならないというデメリットもあるのです。
社会保険労務士の仕事内容について詳しくは「社労士の仕事内容には何がある?独占業務や開業社労士についても解説」で紹介しています。
社会保険労務士の給料・年収が高いというイメージは本当なのか
社労士の給料・年収は高いと言われているため、転職するにあたって社労士資格を取ろうと考える人も増えています。
ですが、社労士として働くと本当に高い給料・年収が稼げるのでしょうか。
社労士の給料・年収は男女によって差が大きい
厚生労働省「平成30年度 賃金構造基本統計調査」によると、社労士の平均年収は、男性が約530万円、女性は459万円です。
月給と合わせて詳しく見ると、次のようになっています。
月給(男性) | 年収(男性) | 月給(女性) | 年収(女性) | 平均 | 380.4千円 | 5,336.8千円 | 334.2千円 | 4,586.8千円 |
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約530万円というのは、一般企業で働くよりは少し多いようにも思えますが、社労士だからいって必ずしも高収入とは言えないようです。
数人でも群を抜いて高額な収入を得ている人・逆に収入が極端に低い人がいれば影響されるため、誰もがこれくらいの金額を手にしているとは言えませんよ。
社労士の資格手当の相場とその他の資格手当の相場
社労士の年収がいいと言われる理由の1つに、資格手当※が付くことが挙げられます。
仕事に活かせる資格を持って人を対象に、給料にプラスされる手当のこと。合格率が低い、難関な資格ほど、手当の金額は高くなるい傾向にあります。
社労士も、試験の合格率は低く難関なイメージですが、実際働いている人の多くが月5,000~10,000円の資格手当を受け取っています。
司法書士 | 20,000円~40,000円 |
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行政書士 | 10,000円~20,000円 |
税理士 | 5,000円~10,000円 |
これはあくまで例であり、求人情報を見ると、純粋に給料が増える「手当」でなく司法書士として働くために必要な「連合会への登録料を負担する」というケースも多く見られました。
また、資格手当としての支給ではなく、基本給に差をつけているところもあります。
司法書士の資格ありと資格なしの人では、月給で約6~7万円ほどの差がつけられている法律事務所の求人もありました。
社労士として年収をアップさせる方法
社労士の年収は、世間のイメージほど高くないもよう。でも、可能なら少しでも高い給料がほしいですよね。
そのためには、いったいどんな方法があるのでしょうか。
- 独立して開業労務士として働く
- 社労士以外の資格を取得する
- 社労士の資格手当が高い企業で働く
ある調査では、社労士資格を持つ人のうち開業している人は約7割。業務年数では、勤務社労士の平均が6.4年なのに対し、開業社労士の平均は13.9年でした。
勤務社労士として働いて実績を積み、その後独立するという人がほとんどです。
開業社労士の場合は勤務社労士と違い、働いた分を収入にダイレクトに反映できるため、自分次第で高収入が目指せます。
大企業やいくつもの企業と顧客契約を結べば、年収が1000万円を超えることもあり得るのです。
しかし自分で顧客開拓や営業をしなくてはいけないため、営業スキルなどにより年収に差が出やすいのも事実。開業を考えるなら、コミュニケーションスキルなども磨いておきましょう。
仕事の幅を広げたり、社労士より難易度の高い資格や関連資格を取ることで、より高い収入を得る方法もあります。
- 行政書士
- 司法書士
- 中小企業診断士
- ファイナンシャルプランナー
このような資格は社労士業務とも関わりがあるため、持っていると開業時にも役立ちます。
「社労士の年収は高い?社労士の給料・年収と年収アップの方法を解説」では、社会保険労務士の給料事情について、より詳しく説明していますよ。
社会保険労務士の資格を取得する前に知っておきたいこと
社労士の資格について、詳細を知っている人は少ないですよね。
また、資格試験に合格しただけでは社労士として働けないことも、あまり知られていません。
資格試験に合格したら、地域の社労士会に登録をする必要があるのです。
資格取得と登録について、それぞれ見ていきましょう。
社労士の試験は年1回!試験日や合格基準を紹介
社労士の資格試験は年に1回のみ。毎年次のような流れで行われています。
申込期間 | 4月中旬~5月末 |
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試験日 | 8月下旬 |
合格発表 | 11月上旬~中旬 |
受験手数料 | 9,000円 |
社労士試験の合格基準は、選択式試験・択一試験の総得点とそれぞれの科目ごとに定められ、1つでも基準に達していなければ不合格です。
社会保険労務士の受験資格の3つの条件
社労士の受験には、次の3項目について全部で13の受験資格が定められています。いずれかに該当すれば受験できます。
- 学歴
- 実務経験(職歴)
- 国家試験の合格(資格)
それぞれ、学歴では主に「大学で62単位以上を取得した人」、実務経験は「通算3年以上」「中小企業診断士など別の国家資格の合格者」など、細かく指定されています。
条件だけ見ていくと難しそうですが、高卒以上の学歴や3年以上の経験があれば、ほとんどの人が受験できるようになっています。ただし受験資格を満たしていることの証明書類の提出も必要です。
社労士の資格を取るためには勉強法も重要
社労士の資格を取るためには、専門の勉強が必要です。労働に関するさまざまな法律についての問題が出題されるので、実務経験がある人でも取り扱ったことのない事例もあるでしょう。試験は簡単ではないので、受験勉強は書かせません。
社労士資格のための勉強法は、主に次の3つがあります。
- 専門学校などへの通学
- 通信講座の受講
- 独学
もっとも効率的なのは、通学して授業を受けること。目標が「試験の合格」とはっきりしているので、試験に必要な知識のみを集中して学べます。
学校ならわからないことはすぐに聞けますし、傾向などの情報が手に入る可能性も。ただし時間とお金が必要です。
勤務しながら勉強したい人は、通信講座か独学で勉強することとなります。
社労士として働くには、試験合格後に社労士会への名簿登録が必要
社労士試験に合格しても、そのまま社労士として働くことはできません。
「社会保険労務士」の肩書を使って仕事をする場合、全国の社会保険労務士連合会の社労士名簿に登録することが必要なのです。
これは法律で義務化されているもの。登録せずに社労士として働くと、社労士法違反になります。
また、登録するには様々な名目のお金が必要です。
- 登録免許税
- 登録手数料
- 入会金
- 年会費
- 特別会費
入会金や特別会費は最初の登録時のみですが、年会費は名簿に登録し続ける限り払い続けなければいけません。
金額は、開業するかどうかや所属する連合会のある都道府県によって異なります。
社労士の資格についてもっと詳しく知りたい人は、「社労士資格は独学でも可能!受験前に知っておくべき受験資格や勉強法」を読んでみてくださいね。
社会保険労務士への転職に押さえておきたいポイント
社会保険労務士として働くために転職する人もいるでしょう。
ただ、資格があるからといって働き口がすぐ見つかるのか、というとそれは断言できません。
社労士として転職する際のポイントを押さえておきましょう。
- 社労士の仕事は企業と労働者がいる限り必要
- 転職では資格よりも実務経験が重視される
- 社労士資格以外のスキルを磨いておくのも有効
それぞれ説明します。
社労士の仕事は企業に不可欠!仕事がなくなることはない
社労士の仕事は社会保険の手続きや給与計算など、従業員がいる会社では必須のことばかりです。
すべての仕事がAIに取って代わられるということはありません。
活躍の場もとしては、社会保険労務士事務所だけではなく、一般企業に就職・転職する人も。ただ一般企業の社員となった場合は、社労士の仕事専門で働くのは難しいでしょう。
社労士の業務とは関係ない作業するケースがほとんどです。
社労士の資格よりも実務経験が重要視される
資格を持っていると転職に有利に働くと思いがちですが、求人を実際に見てみると、そうでもないことに気づきます。
「社労士資格」を必須として求人を出している企業は少なく、資格については不問で、人事・総務部門で採用するところがほとんどです。
もちろん、人事・総務の仕事では社労士資格を持っていることでライバルを一歩リードできる可能性は高いです。
しかし、即戦力として社労士の資格よりも実務経験を重要視している企業が多いのです。資格のみでは弱いと言わざるを得ません。
でも、30歳を過ぎて社労士の資格を取る人も多く、仕事柄、ある程度落ち着いた年代の方がコミュニケーションが取りやすく信頼されやすい、といったメリットもあります。
資格だけでなく、社労士に必要なコミュニケーション能力、会話力、仕事の正確性などのスキルを身につけ、アピールすることが採用への近道です。
社労士以外の資格・スキルを身に付けるのも1つの手
じゃあ社労士資格を取る必要はない気がしてきました・・・。
未経験で資格だけあっても、アピールとしては弱いという話です。
- メンタルヘルス・マネジメント検定
- マイナンバー実務検定
- コミュニケーションスキル
- 正確、かつスピーディに仕事を進めるスキル
- スケジュール管理スキル
このような資格・スキルがあれば、社労士としては未経験でも、価値ある人材だとアピールすることができます。
転職サイト・転職エージェントを上手に利用する
自分で求人を探しても、「いいところがなかなか見つからない」「求人をどう選んだらいいかわからない」という人もいますよね。「いくつか応募はしたけど、書類選考で落ちてしまう」という人も。
そんなときにおすすめなのが、転職サイト・転職エージェントを上手に利用することです。
転職エージェントを利用すると、転職のプロとも言えるアドバイザーが求人探しや面接対策など、転職に関するあらゆるサポートをしてくれます。
転職サイト、エージェントはたくさんあるので、選択肢を増やすためにも2~3個同時に利用するのがおすすめです。エージェントはアドバイザーとの相性も転職成功を左右するカギとなりますよ。
社労士への転職を考えている人は、「社労士の転職に必要なものとは?資格以外に必要なスキルや活躍場所も」の記事もぜひ参考にしてください。
社労士は長い目で見ると年収アップに繋がる仕事
しかし社労士の資格を取得したからといって、すぐに年収がアップするものではありません。
企業に勤めるのであれば、給与は一般の社員と比べて資格手当があるかないかの違い、ということも。
実務経験を積んで独立し、「開業社労士」して顧客獲得などにも力を入れれば、格段に年収を上げることができるでしょう。
社労士になるのは簡単ではありませんが、60歳を過ぎても活躍できるので、長く働きたいという人にもおすすめです。
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