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マタハラとは?働くママのための基礎知識(法律・事例・相談窓口)

マタハラとは?働くママのための基礎知識(法律・事例・相談窓口)

「マタハラ」とは「マタニティハラスメント」を省略した言葉で、仕事をしている女性が妊娠や出産によって、職場で嫌がらせを受けたり不利益を被ったりすることを意味します。

あなたの職場でも、思い当たることはありませんか?

近年では国がハラスメント防止を呼びかけたり、企業もマタハラに関する知識の教育や防止への取り組みに力を入れているので、やや少なくはなっているもののまだまだ多いのが現状。

厚生労働省によると、都道府県の労働局にある雇用均等室に寄せられた相談件数は、2015年度には4,269件、令和元年度は2,131件でした。

この記事では、まだまだ改善がなされるべきマタハラについて取り上げます。マタハラの事例や相談窓口も紹介するので、マタハラに悩む人はぜひ読んでみてください。

そうでない人も、自分がマタハラ加害者になってはいないか、気をつけてみてくださいね。

マタハラってどんなもの?事例を交えて具体的に紹介します

妊娠したことを会社に告げてから、周りの態度が変わったり、働きにくくなったり、といったことはありませんか?

もしかしたらそれはマタニティハラスメントかもしれません。

まずは、どのような行為がマタハラになるのか、事例も交えつつ具体的に確認していきましょう。

禁止されている、不利益な「マタハラ」の扱い

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法では、会社側が従業員の妊娠や出産・育児などにより、短時間勤務などを余儀なくされることを機に次のような扱いをすることを禁止しています。

不利益な取り扱いの例
  • 解雇・雇い止め
  • 契約更新回数の引き下げ
  • 雇用形態の変更
  • 降格・昇格、昇進に不利益となる評価
  • 減給、賞与などの不利益な算定
  • 不利益となる配置転換、自宅待機命令
  • 仕事をさせない、雑務ばかりさせる

配置転換に関しては、例えば長時間の立ち仕事から負担がかかりにくいデスクワークへの転換を会社が提案し、本人がそれに同意したなら問題はありません。しかし、業務上に支障もないのに雑用しかさせないといったような配置転換は、違法な不利益とみなされます。

そのほか解雇や雇い止めなど、長期休養に入られるのを避けるために辞めさせようとする動きも「マタハラ」に当たります。

ただし、客観的に見て業務上の必要性があると見なされるもの、安全上の配慮でやむを得ない場合などは、ハラスメントには値しません。

精神的・肉体的な苦痛もマタハラに含まれます

雇用や給料など待遇に関することのみではなく、精神的・肉体的な苦痛を与えることもマタハラです。

精神的・肉体的苦痛を与えるマタハラの例
  • 言葉や態度で攻撃する
  • 攻撃的な態度を取る
  • 体に負担がかかる仕事をさせる
  • 近くでタバコを吸う

「攻撃」といっても、怒鳴ったりしなければいいわけではありません。妊娠中で具合が良くない女性に対し、「辛いなら辞めたら?」「そんなのは甘えでしょ」などと言ったり、冷たい態度を取ったり。さらに、重い荷物を運ばせる、立ち仕事を長時間させるなど、体に負担がかかる仕事をさせることもマタハラに当たる可能性が高いです。

こういった嫌がらせをされ苦痛を感じることが、流産など身体に悪い影響を及ぼすことも十分に考えられます。自分やわが子のために、マタハラに耐えることを諦めて退職してしまう人もいるのです。

具体的にどんなことが起きている?マタハラの事例

マタハラと言える具体的な事例をいくつか見てみましょう。

マタハラの事例
  • 妊娠を伝えたら退職を強要された
  • つわりで仕事をしばらく休んだら、雑用しかさせてもらえなくなった
  • 妊婦健診を受ける目的で休みを申請しても、休めなかった
  • これまで参加していたミーティングのメンバーから外された
  • 「妊婦だからといって特別扱いできない」と残業を強いられた
  • 育休について上司に相談したら「それなら辞めてほしい」と言われた
  • 「こんな忙しい時期に妊娠するなんて」と非難された
  • 流産して仕事を休んだら非難された
  • 「堕ろしたら?」と言われた
  • 仕事に復帰したら全く経験のない仕事を与えられ、給与も減額された
「堕ろしたら?」なんて言う人がいるんですか?恐ろしいですね・・・。
そうですよね。そこまで行くと人権侵害以外の何ものでもない気がします。

マタハラで裁判になった事例

実際に裁判になった事例として、次のようなものがあります。

経緯:理学療法士として働いていた女性が、妊娠を機に負担が少ない業務への転換を求めたところ、異動だけでなく降格となった。そして育児休業から復帰しても以前の役職には戻してもらえなかった。

女性は降格されたこと、および役職の復帰が叶わなかったことが違法および扶養行為などにあたるとして訴えを起こした。

結果:最高裁で、降格については雇用機会均等法に反するものと認められ、、無効となった。

このケースでは、当初、高等裁判所では降格に本人の同意があったものとして違法とは認められなかったものの、最高裁判所では総合的な事情や法律の主旨から違法と判断されました。

もう一つ、別の事例も見てみましょう。

経緯:学校法人の女性従業員が、出産により8週間の産後休業を取得。復帰後は約1年間、勤務時間を短縮して働いたところ、その期間を欠勤扱いとされ、賞与の支払要件である「出勤率90%以上」に満たないとして賞与が2回支給されなかった。

女性は、法律上認められた権利の行使によって不利益を被るのはおかしいとして訴えを起こした。

結果:学校側が産後休業や短縮した勤務時間を欠勤扱いにしたことは、実質的に法律で認められた権利の行使を抑制しているとして、公序に反するため無効であると認めた。

しかし、賞与については法律上の義務があるものではなく、欠勤に対して減額すること自体は違法とは言えないとも判断している。

なるほど。訴えた側の意見も一部認められているのは良かったですが、言い分がすべて通っているわけではないんですね。
ええ、特に賃金に関しては、「ノーワーク・ノーペイ」が原則ですから、働いていない期間は払わない、という考えで不利益な扱いをしてしまう企業があるようです。

こういった裁判で、ノーワーク・ノーペイの範疇を超えた取り扱いが違法だと認められているので、改善はされつつあると思いますよ。

働く妊産婦は保護されている!マタハラ関係の法律を知ろう

マタハラに遭っていても、「自分が我慢すればいい」と我慢してしまう人がいることも確かです。

しかし、働く妊産婦は男女雇用機会均等法や労働基準法によって守られています。

それを知っていると権利の正当性を主張しやすくなりますので、ぜひ確認しておきましょう。

法律による定め(妊娠中および産後)

働く女性の妊娠中および出産後に雇用主側が配慮すべき措置のことを「母性健康管理」と言います。

会社側に義務付けられる母性健康管理
  • 保健指導や妊婦健診のための時間を確保する
  • 医師らの指導に基づく妊娠中の勤務時間の短縮、産後の作業の制限などに応じる
  • 妊娠中の体に負担がかかりにくい業務への転換請求に応じる
  • 請求に応じて残業や夜勤、休日出勤をさせない
  • 妊娠・出産等に有害な仕事に就かせない
  • 産前休業の請求があれば応じる
  • 産後8週間は就業させない
    (産後6週間以上で本人の請求がある場合を除く)
  • 生後1年未満の子供を育てる女性からの、育児時間の請求に応じる

仕事に復帰後、子どもが1歳になるまでの間は、少なくともそれぞれ30分、1日に2回育児時間が請求できます。

妊娠中および産後の労働時間については、変形労働時間制で働いている場合でも、会社側に請求すれば法定時間を超えた労働をさせられない決まりです。

母性健康管理を適切に行うために、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」というものがあります。

医師らがこれに必要な措置や指導事項を記入して妊娠・産後の女性に渡したら、女性は会社側にそのカードを提出し、必要な措置を講じてもらうよう申し出るのです。

そのカードがないと、時間短縮とかを認めてもらえないんですか?
いえ、措置が必要な健康状態だということが明らかなら、会社側は必要な措置をする必要がありますよ。

会社から担当の医師に連絡をして、話を聞いたりすることになるでしょう。

法律による定め(雇用契約に関して)

雇用契約そのものに関しては、最初の章で紹介したとおり、妊娠・出産をしたことや、それに伴う休業の申し出や取得をしたことをきっかけに解雇や「不利益な扱い」をすることは禁止されています。

解雇に関しては、いかなる理由であっても「産前産後休業期間中」および「その後30日間」の間の解雇は法律で禁止されています。

妊娠中および産後1年以内の解雇は、妊娠や出産、産休取得による解雇ではないことを会社側が証明しない限り無効です。

職場でのマタハラ防止措置

会社側には、職場で次のようなマタハラ防止策を講じる必要もあります。

会社側が取るべきマタハラ防止策
  • マタハラについての知識やマタハラ防止意識の周知・啓発
  • マタハラ加害者への対処内容を就業規則などで規定
  • マタハラの苦情・相談窓口を設置する
  • マタハラが発生した場合の事実確認、加害者への措置、再発に向けた措置
  • 相談者・加害者のプライバシー配慮

自分が発した一言がマタハラに該当するとは思ってもいない人も多いもの。職場でハラスメントに関するセミナーを開いたりして、どういう事例がマタハラに値するのか、ハラスメントの背景にある妊娠・出産への否定的な考え、ハラスメントが許されないものであるという意識などについて学んでいくことが大切です。

職場全体の、日頃からのコミュニケーションもマタハラ発生に大きく関係すると考えられるので、上司のみなさんはそこから気をつけるべきでしょうね。

マタハラで困っている!そんな時に相談できる窓口一覧

今まさに自分はマタハラを受けている、という人は、すぐにでも職場の相談窓口を利用しましょう。

もし職場の人間関係が悪かったりして、社内の相談窓口は信用できない」と言う人は、社外の窓口に相談してください。

マタハラについて相談できる窓口を紹介します。

都道府県労働局の雇用環境・均等室

すべての都道府県にある労働局の雇用環境・均等室は、誰もが働きやすい雇用環境の実現を目指して設置されています。

マタハラやセクハラに関する相談窓口もあり、企業に対する指導や、問題解決のための取り組みとして調停やあっせんを行います。

女性にやさしい職場づくり相談窓口

女性にやさしい職場づくり相談窓口」は、厚生労働省の委託で運営されているサイトで、働く女性の悩みや質問に対して医師や社会保険労務士といった専門家が答えてくれます。

これまで寄せられた相談とその答えも閲覧できるので、相談しようか迷っている人も一度見てみてください。

ただしこのサイトは、具体的な解決をしてくれるものではありません。何か行動を起こしてもらうことを求めるなら、都道府県労働局の雇用環境・均等部室を利用する方がよいでしょう。

連合なんでも労働相談ホットライン

連合なんでも労働相談ホットライン」は、日本労働組合総連合会によって行われている電話相談です。労働に関する相談なら何でも受け付けており、マタハラに関する相談も可能です。

「電話で話すのはちょっと・・・」という人は、メールで相談してみましょう。

日本労働弁護団「女性のためのホットライン」

日本労働弁護士団でも、労働に関するさまざまな相談を受け付けています。

マタハラやセクハラなど女性特有の問題に対しては、女性専用のホットラインで電話による相談を行ってくれます。

利用できる時間帯は第2・第4水曜日の15時から17時と限定されていますが、必ず女性弁護士に対応してもらえます。

いろんな相談窓口があるんですね。ちょっと心強いです。

ただ、これってもちろん秘密は守ってもらえるんですよね?

ええ、相談するだけなら秘密は守ってもらえますよ。

ただ、労働局に会社への指導や調停などを求めるなら、会社にも知られることになりますが仕方ありません。

一人で悩まないで!マタハラ被害にあっているなら相談を

妊娠や出産で一時働くことができなかったりするからといって、働く女性が不利な立場に置かれることは、本来あってはならないこと。

妊娠したり出産したりした女性は、職場で不当な扱いを受けないよう、法律によって守られています。

しかし実際は、ハラスメントに対する知識や意識が不足している人もまだ多く、妊娠や出産を機に解雇に追い込まれたり不当な扱いを受けたりする人もいるのが現実です。

また、法律上で必要な対処はとられていても、周りの人から心ない言葉を言われたり、居づらい雰囲気になっていたりして、つらい思いをしている人もいるでしょう。

妊娠中から産後にかけてはとても大切な時期ですし、少子高齢化という社会を鑑みても、出産を控えた女性、子育て中の女性が虐げられるようなことがあってはなりません。1人で悩みを抱えることなく、まずは信頼できる人や社内・社外の窓口などに相談してみてください。

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