失業したら年金免除の申請を!免除された分の保険料は追納もできます
国民年金は、20歳~60歳までの40年間のうち10年以上保険料を納めることによって、65歳以降に老齢基礎年金を受け取れたり、病気やケガで障害が残った場合(障害年金)や、一家の働き手が亡くなった際に年金を受け取れる(遺族年金)制度です。
原則として、保険料を納めないと年金を受け取ることはできません。失業などで保険料を払えなかった(未納)期間がある場合は、未納期間分の年金受給額が減額されてしまいます。
失業(退職)して国民年金保険料を納められない場合に、保険料を免除してもらうように申請できる制度があります。
ただし免除がされると、通常通り納付した人に比べて将来受け取る年金の額は少なくなることに。また、一部のみ免除となった場合は、減額分を納付しないと未納と同じ扱いになってしまいます。
この記事では「失業による年金免除」の制度や申請方法をはじめ、免除された期間分の国民保険料を追納する制度についてもわかりやすく解説します。
失業で年金保険料の支払いが生活の負担になっている・なりそうな人は、ぜひ参考にしてください。
失業(退職)による年金免除の内容とそのメリットを紹介します
理由に関わらず、国民年金保険料の納付が難しくなった人に対して、国は特例免除の制度を設けています。
保険料をただ「納めない」というだけでは未納期間となってしますが、免除を受けると、2つの大きなメリットがあります。
- 免除を受けた期間も、保険料を一部納付したことになる
- 万が一の際に、障害年金や遺族年金を受け取れる
退職による特例免除には、さらに、「所得審査で本人の所得をゼロとして計算する(本人の所得を除外する)」というメリットもあるのです。
それぞれのメリットについて、詳しく見てみましょう。
失業による年金免除を受けた期間も保険料を一部納付したことになる
国民年金保険料の免除制度では、月々支払う保険料が、収入に応じて次のいずれかの割合で免除されます。
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
ただし将来もらえる年金額は、年金保険料を全額納付した場合に比べて少なくはなります。
全額免除だと全額納付の2分の1、4分の3免除だと8分の5、半額免除だと4分の3、4分の1免除だと8分の7という割合です。
また、一部免除(4分の3~4分の1)の場合は、減額された保険料を追納しないと「未納」の扱いになってしまい、受給資格期間にも算入されないので注意が必要です。
追納については後ほど説明します。
年金免除の期間中も「障害年金」や「遺族年金」などを受け取れる
国民年金の給付の種類には、働いているときに支払って老後に受け取る「老齢年金」のほかに、「障害年金」と「遺族年金」などがあります。
年金の種類 | 内容 |
---|---|
老齢年金 | 年金保険料を10年以上納めた人(免除期間含む)に、65歳から支給される年金 |
障害年金 | 病気やケガなどが原因で生活や仕事などが制限された場合に支給される年金 |
遺族年金 | 年金保険料を支払っている本人が死亡したときに、遺族に支給される年金 |
月々の年金保険料を支払わない「未納」の状態だと、この「障害年金」と「遺族年金」を受け取ることはできません。
しかし、年金免除の期間中は保険料を一部納付したのと同じ扱いになるので、重い障害や死亡など万が一の際には「障害年金」や「遺族年金」が支給されます。
失業による年金免除の特例は審査基準が優しい
通常の年金免除制度は、「申請する本人および配偶者、世帯主」の前年所得※によって、保険料の免除が適用されるかどうか、どの程度適用されるのが決まります。
しかし失業による年金免除の場合は、本人の前年所得を除外されるので、審査の基準をクリアしやすくなるのです。
年金免除の対象になるかどうかは、失業した本人の配偶者・世帯主のうち所得が高いほうの前年所得が一定額以下であるかどうかで決まります。
年金免除の対象となる所得の目安は、次のとおりです。
免除の種類 | 単身世帯 | 2人世帯 (※2) |
4人世帯 (※3) |
---|---|---|---|
全額免除 | 57万円 (122万円) |
92万円 (157万円) |
162万円 (257万円) |
4分の3 | 93万円 (158万円) |
142万円 (229万円) |
230万円 (354万円) |
半額免除 | 141万円 (227万円) |
195万円 (304万円) |
282万円 (420万円) |
4分の1 | 189万円 (296万円) |
247万円 (376万円) |
335万円 (486万円) |
※2:夫婦・子ども2人
たとえば夫婦2人家族で夫が失業した場合、特例免除では退職した夫の所得は含めず、扶養親族である妻の前年所得額が92万円以下であれば、全額免除の対象となります。
全額免除の基準となる所得の計算式は「(扶養親族等の数+1)× 35万円 + 22万円」で、これが世帯主・配偶者それぞれの前年所得金額以下であることが条件です。
失業して保険料の納付が難しい場合に年金免除を申請する方法
保険料の納付免除の申請には、申請の期間が決められており、「7月から翌年6月まで」という決まったサイクル(周期)があります。
申請可能な期間は次の通り。
・【未来の分】翌年6月まで(1~6月に申請した場合は、その年の6月まで)
また、1枚の申請書で申請可能なのは、7月から次の年の6月までの12カ月間となるため、その後も引き続き免除を申請する場合は7月~8月中に行うようにしてください。
通常の免除制度では、あらかじめ継続申請の希望もできますが、退職(失業)の特例での免除については継続申請はできません。
では、必要書類などを含めた申請の手順を見ていきましょう。
退職(失業)した場合の年金免除特例を申請する手順
年金免除の申請は、専用の用紙に必要事項を記入して、役所の国民年金担当窓口、または年金事務所に提出して行います。
ただ、それまで会社の厚生年金に加入していた人が退職してすぐ免除申請をする場合、まずは国民年金への加入手続きをして免除申請をすることになります。
国民年金への切り替えは、退職後14日以内に手続きが必要です。
会社を辞めて国民年金への加入に切り替え、免除申請をする場合は、まず手続きに必要な次の書類を用意します。
- 年金手帳またはマイナンバーカード
- 離職票あるいは社会保険の資格喪失証明書等
- 「国民年金保険料 免除・納付猶予申請書」
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 印鑑
必要書類については各市町村によって要・不要が異なる場合があります。住んでいる市区町村のホームページで確認してください。
年金保険料免除の申請書は、日本年金機構の公式サイトからダウンロードして印刷可能。市区町村役場の国民年金担当窓口で受け取ることもできます。
離職票がない場合は、ハローワークで受け取る「雇用保険受給資格者証」のコピーでも大丈夫ですよ。
申請書には氏名や住所などの基本情報のほかに、年金免除の申請期間や前年度の所得などを記入します。
まずは「A.基本情報」欄に次の事項を記入します。
番号 | 記入内容 |
---|---|
1 | 基礎年金番号 |
2 | 電話番号 |
3 | 氏名 |
4 | 生年月日 |
5 | 配偶者の氏名 |
6 | 配偶者の生年月日 |
7 | 世帯主の氏名※ |
「B.申請内容」欄には、次の事項を記入してください。
番号 | 記入内容 |
---|---|
9 | 免除等区分 (希望しない免除区分があれば、その「免除等区分」にバツ印) |
10 | 年金免除の申請期間 |
11 | 確定申告などの税申告の有無 (会社で年末調整を受けた場合は「あり」に◯印) |
12 | 前年所得 (申請期間が平成27年度分の場合は、平成26年1月~12月までの期間の所得内容を記入) |
13 | 特例認定区分 (失業に◯印と退職日の翌日の年月日、雇用保険加入の「あり・なし」いずれかに◯印を記入) |
14 | 継続希望の有無 (失業等による特例免除の場合は、継続に該当しない) |
15 | 備考欄 (失業後など一部の期間に限り申請する場合は、その旨を記入) |
年金免除を申請する期間の前年に発行された源泉徴収票を確認するといいですよ。
年金免除に必要な書類を揃えたら、役所や年金事務所に提出しましょう。
ただし年金免除の申請期限は保険料の納付期限から2年後まで、それ以降は時効となり申請できません。
年金免除の審査には2~3カ月ほどかかり、審査結果の書類は日本年金機構から郵送されてきます。
ただし、審査の結果が「全額免除」以外の場合は、残りを分割払いなどで納付する必要があります。
年金免除を受けて減った年金保険料はあとから追納できる
年金免除を受けた期間があると、その期間中の免除額に応じた割合の保険料を国が負担してくれます。
とは言え、保険料を全額納付した場合に比べて、将来受給できる年金額が減ってしまうんです。
減額される年金額の割合は、免除の種類によって異なります。
免除の種類 | 将来もらえる年金額の割合 |
---|---|
全額免除 | 2分の1 |
4分の3免除 | 8分の5 |
半額免除 | 4分の3 |
4分の1免除 | 8分の7 |
たとえば「全額免除」の期間が3年あった場合、この3年間分の年金額は、年金保険料を全額納付した場合に比べて半分に減ってしまうことに。
しかし年金保険料を後払いで納付(追納)することによって、将来もらえる「老年基礎年金」の年金額を増やすことができます。
さらに追納した保険料は「社会保険料控除」の対象になるので、年末調整の手続きをすればその分の「所得税」と「住民税」も安くなるんですよ。
収入が高くなるほど所得税率も上がるため、年収が高い人ほど節税効果が期待できるというわけです。
将来もらえる年金の見込額を知りたい人は、日本年金機構が運営している「ねんきんネット」を利用してください。さまざまな条件でシミュレーションできますよ。
「ねんきんネット」の利用には「基礎年金番号」などの基本情報を登録する必要があります。
年金保険料の追納に関する注意点は、次のとおりです。
- 老齢基礎年金の受給者になると納付できない
- 3年以上前の保険料を追納すると加算額がかかる
年金保険料の追納制度では、過去10年前までの国民年金保険料を支払うことができます。
たとえば平成29年4月分の年金保険料を免除した場合は、平成39年4月末までの分を追納することが可能です。
年金保険料の追納は、老齢基礎年金の受給対象となる65歳までに済ませましょう。
また、免除期間の翌年度から数えて3年度目以降に保険料を追納する場合は、当時の保険料額に、経過期間に応じた加算額が上乗せされてしまいます。
免除の翌々年度までの追納には加算額が発生しないので、なるべく早めに納めるようにしましょう。
失業したら年金免除や年金保険料の追納制度を活用しよう!
失業による年金免除の特例制度は、通常の年金免除よりも審査が通りやすく、「障害年金」や「遺族年金」の支給対象になるなどのメリットがあります。
また、免除された年金保険料はあとから納付することができます。追納すれば、将来もらえる年金額を増やせるだけでなく、年末調整などで所得控除も受けられるのです。
ただ、免除を受けていた期間から3年以上経ってしまうと、追納する保険料に加算額を上乗せして納めなければなりません。
失業中は年金免除を申請して金銭面の負担を軽減し、転職したらなるべく早く年金保険料を追納するようにしましょう
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