退職後に必要な住民税の手続きマニュアル!徴収ルールと納付方法

会社に所属して給与をもらっている方であれば、給与明細の控除項目の中に、住民税があることはご存知だと思います。

住民税というのは、市町村民税や都道府県民税といった自治体に支払う地方税の総称です。原則として一定以上の所得がある人が課税対象となります。支払った住民税は、教育や福祉、環境整備などの様々な行政サービスを行うための費用として使われます。

転職などのために会社を退職する際には、様々な手続きが必要になりますが、この住民税に関しても、場合によっては退職時に何らかの手続きをしなければならない可能性があります。

そんな住民税について、徴収ルールや納付方法と言った基本的な仕組みと、知っておきたい退職時の手続きについてここでは詳しく解説していきましょう。

前年の所得によって税額が決まる!住民税の基本の仕組み

会社勤めの方の場合、住民税は給与天引きが基本となるので、住民税の課税対象や税額の決め方については、あまり詳しくは知らないという方も案外多いのではないでしょうか?

まずは住民税の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

冒頭でも説明した通り、住民税は基本的に一定以上の所得がある人が支払うべき税金ですが、実際に課税対象となるのは、前年の1月1日から12月31日までのぴったり1年間分の所得です。

この前年1年分の所得を基準にして決定された住民税を、基本的には翌年の6月からの1年間で支払う形になります。つまり住民税というのは、後払いの税金なのです。

なお、住民税はさらに所得割と均等割という2つの区分に分けられています。

所得割とは…前年の所得金額に応じて決まった税率で課税される分。通常、市町村民税と都道府県民税合わせて所得金額の10%となる。

均等割とは…所得に関わらず、課税対象者全員に一定額で課税される分。原則として、一律4000円(市町村民税3000円・都道府県民税1000円)とされている。

※復興増税により、所得割に関しては平成25年から25年間は基準税率プラス2.1%、均等割に関しては平成26年から10年間は基準額プラス1000円となる。

所得割と均等割の金額の合算が、個人が支払うべき住民税の総額になります。したがって、所得額が大きくなるほど、住民税の金額も上がっていくのです。

住民税の2つの納付方法…普通徴収と特別徴収の違いとは

住民税の納付方法には普通徴収と特別徴収の2種類があります。2つの納付方法の主な違いを表で確認してみましょう。

住民税の普通徴収と特別徴収の違い
普通徴収 特別徴収
給与所得者以外が対象 給与所得者が対象
納税義務者本人に税額通知書が送付 本人には税額の通知なし
本人が役所・金融機関等で直接支払い 事業主がまとめて納税
年間で4期に分けて納税(一括支払いも可) 毎月の給与から天引き(計12回払い)
普通徴収と特別徴収、どちらかを自分で選ぶということは基本的にはできません。会社に所属して給与を受け取っていれば、自動的に特別徴収の対象となり、住民税は天引きされることになります。

逆に会社を退職して自営業を始めたり、無職になれば、特別徴収のシステムを利用することは不可能になるので、普通徴収に移行して自分で住民税の支払い手続きをしなければなりません。

普通徴収の場合、特別徴収に比べて支払回数が少ない分、一度の負担が大きそうですね。支払うタイミングをあらかじめ知っておきたいです。
普通徴収の納期は自治体によって異なる可能性があるので、一概には言えません。6月・8月・10月・1月の4期に分ける形式が主流ではありますが、一度各自治体に確認する必要があるでしょう。

退職時期で変わる!?退職・転職時の住民税の支払い基本マニュアル

繰り返しになりますが、住民税は前年の所得に応じて課税される仕組みになっています。

したがって、たとえ今現在勤めている会社を退職しても、無職になって収入がなくなるとしても、その年に支払うべき住民税としてすでに決定された金額は必ずおさめなければなりません。

とはいえ、退職して会社の所属を離れてしまえば、それまでのように給与から住民税を天引きすることはできなくなりますよね。別の会社に転職するにしても、実は転職先で自動的に特別徴収を継続してもらうということはできなくなっているのです。

退職時、あるいは退職後の住民税の納付方法は、主に退職するタイミングによって3通りに分けられます。

●1月1日~4月30日に退職する場合●

退職月からその年の5月分までの住民税を一括徴収

●5月1日~5月31日に退職する場合●

当初の予定通り、1か月分の住民税を徴収

住民税の前年1年分の支払いは、毎年5月分で終了になり、6月からはその次の年の分の住民税の支払いに切り替わります。

したがって、1月1日~5月31日までの退職であれば、退職月から5月の切替時期までの住民税を、最後の給与(退職金含む)から一括で天引きするというのが一般的です。

そのため、退職月によって一括徴収の金額は変わり、住民税の年度切替月である5月の退職であれば、残り1か月分の住民税を支払うだけで済むので一時的な費用負担としては小さくなります。

一方、退職が6月以降になる場合、複数の支払い方法の選択肢が出てきます。

●6月1日~12月31日に退職する場合●

①退職月から翌5月までの住民税を一括徴収
②普通徴収に切り替えて自分で支払う
③転職先の会社で特別徴収を継続

退職のタイミングが住民税の年度の切り替わりである6月以降になる場合でも、住民税を天引きで一括徴収にしてもらうことは可能ではありますが、金額が大きくなってしまいがちなのであまりおすすめはできません。

税額が最終給与の金額を上回ってしまった場合には、一括徴収自体ができなくなります。

そのため、この場合は特別徴収から普通徴収に切り替えて、自分で住民税の支払いをするというのが主流の方法になります。

ただし退職後に、転職で別の会社に所属する予定があるのであれば、転職先の会社で継続して特別徴収を行うことも可能になります。

要確認!転職先の会社で特別徴収を継続するために必要な手続き

転職先での住民税の特別徴収の継続を希望する場合には、今現在勤めている会社もしくは転職先の会社にその旨を申し出て所定の手続きを踏まなければならないので、必ず確認しておきましょう。

まず、転職前に現在勤めている会社で手続きをするのであれば、転職先での特別徴収継続の旨を記載した『給与所得者移動届出書』を作成してもらい、なおかつ自治体に会社から提出してもらわなければなりません。

その際、会社の方から転職先の会社に問い合わせて、必要事項を確認・記入してもらう必要があります。したがって、転職することや転職先の会社の詳細を伏せたまま手続きをすることはできないので、注意が必要です。

6月以降の退職だけでなく、1月~5月までに退職する場合でも希望すれば対応してもらえる可能性はあります。

転職先の会社に入社してから手続きをする場合、前職の退職時点でいったん普通徴収に切り替えたうえで、転職先の会社に普通徴収の住民税納付書を提出して、自治体に再び普通徴収から特別徴収への切り替えを届け出てもらうという形になります。

なお、もし入社前に普通徴収で住民税の納付を行った場合は、きちんと正確な時期と金額を伝えるようにしましょう。

転職先に入社してから特別徴収の手続きを行う場合、以下の2つのポイントに注意が必要です。

  • 届け出が自治体に届いた時点で普通徴収の納付期限が過ぎていると、特別徴収に切り替えることはできない
  • 届け出から特別徴収が開始されるまでは、2~3か月ほどかかることもある

手続きのシステムや会社・自治体の締日との関係上、どうしてもすべての手続きが済むまでに時間がかかってしまいがちなのは仕方がないことと言えます。書類の提出などは、それを考慮して早め早めに進めていくようにしましょう。

退職のタイミングによって、住民税の金額が変わるという噂を聞いたことがあったのですが、まったく関係ないんですね…。
住民税は前年の所得を基準に決まるものですから、一度に支払う金額は退職のタイミングしだいで異なっても、年間で支払う総額は変わりようがありませんよ。ちなみに退職による控除や減免の仕組みもありません。間違った情報に惑わされないようにしてくださいね。

退職・転職後に引っ越したら、住民税はどちらの自治体におさめるべき?

もし退職や転職に伴って引っ越しをした場合、住民税は転居前と転居後、どちらの自治体におさめることになるのでしょうか?特に普通徴収に切り替えた場合は、自分で支払わなければならないので気になるところですよね。

原則として、住民税をおさめる自治体は、その年の1月1日の時点で住民票が置かれているところということになっています。

したがって、今現在支払い中の前年分の住民税に関しては、転居前の自治体に納め続け、次の6月以降に支払う分の住民税から転居先の自治体に支払う形になります。

ただし転居のタイミングが1月2日以降になった場合は、次の6月からの住民税も、引き続き転居前の自治体に支払うことになります。

税金の支払い途中で引っ越してしまっても、転居先の自治体でも住民税の税額が正しくわかるのはなぜなんでしょうか?
役所には源泉徴収票と同じ内容の『給与支払報告書』という書類が会社から提出されるんです。住民票が移されると、転居先の自治体にその書類も送られるので、所得と税額がわかるんですよ。

予想外のトラブルの原因に!?知らなきゃ困る住民税の仕組み

給与天引きが基本の住民税は普段はあまり意識することがないかもしれません。

しかし、退職時には一括徴収で大きな出費が必要になったり、普通徴収に切り替わっているのを気づかずに支払い損ねてしまったりと、退職時の住民税の仕組みや必要な手続きを知らずにいると思わぬトラブルを招きかねません。

退職時に必要な知識の1つとして、ぜひ住民税のだいたいの仕組みは正しく理解しておくことをおすすめします。