バス運転手に転職する前に知っておきたい、仕事の大変さや業界の今後
子どものころ憧れていた人も多い、バスの運転手。通勤中に「運転手募集」の広告を見て、転職を考える人もいるのではないでしょうか。
バス業界は深刻な人手不足のため、運転手を募集している会社がたくさんあります。
求人がたくさんあるので転職しやすく思えますが、人手が足りないのには何か理由がありそうですよね。事故などのニュースも気になるところです。
この記事では、バス運転手の仕事内容や労働環境などについて、どのように大変なのかを解説。
バス運転手に転職する際に気をつけたい、職場選びのポイントも紹介します。
バス運転手の仕事:転職したら何がどう大変?状況別に紹介
バスの運転手になる、そして続けていくには、「運転が好きだ」「バスの運転手が憧れだった」という気持ちも大切な動機です。
しかし「好き」だけでは理想と現実のギャップに耐えられない可能性が高いのも現実。
バス運転手はどんなことに苦労するのか、あらかじめ知っておきましょう。
「運転中」「体力面」「時間的なこと」「人間関係」の4つの観点で説明します。
バス運転手には運転中に注意すべきことがたくさんある
運転中において、バス運転手には主に次の3つが必要です。
- 運転中はスケジュールと乗客の安全の両方に神経をつかう
- 運転しながら、乗客に向けて注意や案内なども行う必要がある
- 乗客からの質問に答えられるよう、料金や停留所に関する知識がいる
バスの運行スケジュールは分刻み。しかし乗客の安全が第一です。
遅れているからと言ってスピードを出したり、空いている車線にその都度移動したりする訳にはいきません。
また、乗客が走行中に立ち上がったり席を移動したりするのは車内事故のもと。乗客の様子にも注意を払う必要があります。
バス会社としては、乗客に注意を促すのはもちろん、その注意喚起がトラブル時の自己防衛やクレーム対策になるという側面もあるのです。
また走行中は、他の車による無理な割り込みやバス停での路上駐車、逆走してくる自転車などにイライラさせられることも多々あります。
バス運転手は座っているだけで楽だと思ったら大間違い
日々走り回って仕事をしている人には、バスの運転手は座っている時間が長くて楽そうに見えるかもしれません。しかし体力面でも楽ではないのです。
- 同じ姿勢かつ神経をつかいながらの運転のため、疲労が蓄積しやすい
- スケジュールに余裕がなく、身体の疲れが取れにくい
バスの運転手が業務中に運転席を離れるのは、車両の不具合や車椅子の乗客への対応などに限られます。
長時間座っているので、腰を痛めたり疲れが取れにくかったりするのです。
体力面に関しては、勤務時間・拘束時間も大きく関係してきますよね。次の項目を見てみましょう。
バス運転手の仕事は拘束時間が長い!1日の半分以上になることも
バス運転手の勤務時間は、その業務の内容から、一般の会社員とは異なる基準があります。
- バス運転手の拘束時間は一般企業よりも長い
- 勤務が終わってから次の勤務まで、最短8時間しかないことも
労働基準法では、従業員の労働時間は原則「1日8時間、1週間あたり40時間までが限度」です。
バスの運転手にももちろんこのルールは適用されますが、業務の性質上、拘束時間についての基準もあります。
それは「1日13時間以内の拘束時間が基本。最大で16時間まで」というもの。
ちなみに拘束時間とは、「労働時間+休憩時間」のこと。
バスは、朝晩の通勤時には運行本数が多いですが昼間は少なめです。
その間に数時間の休憩(自由)時間を入れて、忙しい朝と夜の両方働くのです。
結果として、会社に拘束されている時間が長くなります。
また、勤務が終わってから次の勤務までの「休息期間」は、「8時間」以上継続していることがルール。
逆に言えば、勤務終了後、次の勤務開始まで8時間しかなくてもよいとされているのです。
「休みの日の前でないと飲めない」という運転手も多いんです。
しかもこれは、待遇改善のために作られた新しい基準。以前はもっと厳しい環境でした。
連続の運転時間を短くして、休憩時間を分割することもできます。
バス運転手は接客業でもある!人とのコミュニケーションも必須です
人付き合いが苦手だからバス運転手に転職したい、という人は、次の3点を知っておかないと後悔する可能性があります。
- バス運転手には接客も必要
- 乗客から苦情を言われることがある
- 職場によっては同僚との人間関係が難しいことも
乗り降り時の挨拶や質問への対応など、バス運転手と乗客が話す機会は意外に多いもの。しかも不特定多数の人が相手です。
そのためバス運転手には、乗客から不満や苦情を言われることがあります。
苦情の内容は、挨拶がない、態度が悪い、運転が荒い、時間に遅れてきた、などさまざま。なかには理不尽なことを言う乗客もいます。
また、比較的高い年齢の男性が多いバス運転手。社内の上下関係がかなり厳しいところもあるのです。
とは言え、職場環境をあらかじめ把握するのは難しいですよね。
応募する前に会社のことをよく調べて、できれば面接時にでも職場見学させてもらうのがおすすめです。
会社説明会があれば参加してみましょう。
転職先企業をよく知るにはどうすればいいか、こちらの記事で詳しく説明しています。
次は、バス運転手への転職で押さえておきたいポイントと、バス業界の現状、政府の取り組みを紹介していきます。
バス運転手の転職は情報収集が鍵!求人情報はココをチェック
一般的な職種と同様、バス運転手の労働環境も職場によって大きく異なります。
転職先の候補となるバス会社は、じっくり選んで決めてください。
国土交通省によるバス運転者のアンケート調査(平成26年発表)によると、回答者約350名のうち4人に1人が、前職もバスの運転手。業界内転職をする人が多いのです。
前職を辞めた理由の多くは、「休日が少ない、長時間労働である」「会社の将来が不安」というものでした。
求人情報を見るときは、次のようなポイントに注目してください。
- どんな勤務形態か(3勤1休、4勤2休、5勤2休など)
- 休日出勤の可能性はあるか
- 連休は取れるか
- 転勤の可能性はないか(あるなら寮の有無など)
- 研修制度や免許取得の支援制度はあるか
- 各種手当や昇給、無事故表彰制度など、給料アップとなる制度はあるか
- 睡眠時無呼吸症候群の検査や人間ドックなど、健康に配慮した福利厚生は充実しているか
- 働きやすい設備が整っているか(個室の仮眠室、社員食堂など)
転職で後悔しないためには、自分はどの条件を優先するのか、どこまで妥協できるのかを決めておくことが大切です。
勤務体系によっては、疲れの取れ具合が違ったり、家族との生活リズムに影響が出たりします。
また給与に関しては、基本給にはバス会社による大差がなくても、各種手当や昇給などプラスアルファの制度で違いが。それによって、年収も大きく異なってきます。
バス運転手の収入については、こちらの記事で解説しているのでぜひ読んでみてください。
バスの運転には大型二種免許が必要です。しかし「普通免許で3年間無事故」などの条件を満たせば、入社時には持っていなくても大丈夫です。
バス運転手の求人を探すなら、バス会社のホームページで探すほか、運転手に特化した転職エージェントを利用するのがおすすめです。
「バス運転手の転職サイトを紹介!業界専門サイトで効率よく情報収集」の記事で紹介しています。
ただし求人数が少なかったり地域が限られていることも。その際は一般的な転職サイトやエージェントも利用してください。
バス運転手の転職~実状と待遇改善に向けた取り組みを紹介
バス運転手の仕事の大変さは、最初の章で紹介した通りです。
ここでは、バス運転手を取り巻く業界の現状を見ていきましょう。
バス運転手の実情について、政府が調査した結果を元に説明します
国土交通省が作成した「自動車運送事業の働き方改革について」によると、バスの運転手の労働環境は、次のような状況となっています。
- 労働時間の長さ:約2割長い
- 残業時間の多さ:約2倍
- 年間の賃金額:約1割安い
- 有効求人倍率:約2倍
- 平均年齢:約8歳高い
- 女性の比率:1割に満たない
人手不足に関しては、「バスの運転者の確保及び育成に向けた検討会」による調査で、97%のバス会社が「運転手不足による影響を実感している」と答えています。
しかし明るい情報もあります。バス運転手が「仕事のやりがい」として最も多く挙げた回答は、「お客様の感謝の声」。
4人に3人が、バス運転手の仕事に「誇りを持っている」と答えているのです。
ただし、バス運転手を他の人にはすすめられない、という人も30%近くいました。
バス運転手の人手不足解消には待遇の改善が不可欠!政府の取り組みとは
バス運転手の人手不足・待遇改善には、政府も事態の打開に向けた取り組みを行っています。
今後もさらなる対策の強化を期待したいところです。
これまでの政府の動きを紹介しておきましょう。
高速道路などで起きたバスの重大事故は、貸切・乗合バス各業界の相次ぐ規制緩和により新規参入業者が増え、競争が激しくなったことが発端と考えられます。
重大事故の防止に向け、平成26年には厚生労働省(労働基準局長)がバス協会に対し、労働時間の管理などを徹底するよう要請を行いました。
また、国土交通省は平成30年に「交通労働災害防止のためのガイドライン」を改正。
バス会社の責務として、バス運転手の睡眠時間に配慮した労働時間の管理や、無理のない走行計画の作成、健康管理の徹底などを改めて呼びかけました。
また、バス運転手の人材不足解消に向けた検討会を、学識経験者やバス関係者を集めて過去3回に渡り開催。
新卒採用の強化や報奨制度の導入、女性が働きやすい環境づくりなどの対策を取るべきだとしています。
しかしバスの運転には、お年寄りへの心配りや手助け、地域に密着したサービスなど、人の手が必要な場面もたくさんありますよ。
赤字路線が廃止となった後、自治体などがコミュニティーバスを運行する地域も増えています。
バス業界は、これからますます進む高齢化社会や人口減少による地域の過疎化に対応していく必要があるのです。
バス運転手への転職は大変なことも多いが、社会の役に立つことは確実
バス運転手の仕事は、ただバスを運転するだけではありません。
安全面に気をつけ、時間通りにバスを走らせ、さらに乗客への気配りもしなくてはならないのです。
この記事を書きながら、筆者もバス運転手の大変さとありがたみを改めて感じました。
高齢者や通勤・通学者にとって、バスは毎日の生活に欠かせない存在。
運転手不足は乗客ひとりひとりにとって深刻な問題です。
人材不足・待遇改善への政府のさらなる改善を、1日も早く実現させてもらいたいですね。
転職するなら、ぜひ条件のよい職場を選んでください。
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