職場でモラハラを受けたら?加害者の特徴や関わる法律、相談窓口
「パワハラ」や「セクハラ」など、さまざまなハラスメント(嫌がらせ)が多くの職場で問題となっています。
その中で、判断が難しいものの1つが「モラハラ」、モラルハラスメントです。
モラハラとは、相手の人格や価値観を無視・否定して精神的な苦痛を与える言動、いわゆる「陰湿ないじめ」のような行為を、繰り返し行うこと。
パワハラやセクハラと異なり、地位や上下関係、属性に関係なく起きています。
個人によっていろんなケースがあり、周りからはわかりにくいという特徴もあります。
この記事では、そんなモラハラの具体的な特徴や例を説明。「これってモラハラでは?」と思ったときの相談窓口も紹介します。
「モラハラ」とはどんな行為?パワハラとはどう違うのか
「モラル・ハラスメント」は、フランスの精神科医の研究により広まった言葉。
「言葉や態度によって巧みに人を傷つける、精神的な暴力」の総称です。
具体的には、次のような特徴があります。
- 言葉や態度による嫌がらせ
- 直接的・身体的な暴力はない
- 密室など他者から見えないところで行われる
- 加害者は、被害者以外には人当たりが良い
- 被害者は自分が悪いと思い込みがち
身体を傷つける暴力ではないことや、他人からはわかりにくいことで、被害者はどんどん追い詰められてしまうことに。
モラハラは、人の命をも奪いかねない悪質な行為なのです。
また、「対等な立場であるはずの関係」でも起こりうるのがモラハラです。
「パワーハラスメント」「モラルハラスメント」は、まったくの別物ではなく、パワハラでありモラハラでもある、という例も多く存在しています。
ただ、モラハラは陰で行われることが多く周囲に理解されにくいもの。その点では、モラハラの方がより「陰湿」な行為であると言えます。
自分もモラハラの被害者かもしれない!モラハラの具体例
無視をしたり、孤立状態をつくったりと、モラハラにはいろんな例があります。
具体的にはどのような行為がモラハラにあたるのかを見ていきましょう。
- 会議や飲み会などに1人だけ呼ばない
- 仕事を回さない、必要な書類を渡さない
- 些細なミスを執拗に攻撃し、見下す
- 「存在が迷惑」「バカ」などと人格や存在を否定する
- 「給料泥棒」などとキャリアを否定する
- 「うざい」「キモい」など嫌悪感を言葉にする
- 身体的な特徴をからかう
- 失敗するよう仕向ける、悪口を言いふらすなどして立場を悪くする
- 家族や趣味などプライベートまで干渉し、否定する
共通するのは、嫌悪感や見下しによる言動だったり、人の自尊心を傷付け侮辱したりするようなこと。
ただ、たとえばそれが1回だけだったりする場合は、たまたま感情的になった、意図的ではなかった、という可能性も完全に否定はできません。
もしくは、メンタルの強い人なら気にしない、ということもあるかもしれません。
しかし、1度や2度の出来事ではなく日常的に精神的な苦痛を強いられる、指導や注意の範囲を超えているようなら、モラハラに該当すると考えられます。
モラハラの加害者・被害者になりやすい人の特徴とは
自分も無意識にモラハラの加害者・被害者になってしまってはいないか、気になる人もいるかもしれませんね。
ここでは、モラハラの加害者と被害者、それぞれになりやすい人の特徴を見ておきましょう。
モラハラをしがちなのはこんな人!「自分が何より大事」な人に要注意
加害者になりやすい人には、次のような特徴があります。
- プライドが高い
- 自分が人より優れていると思っている
- 自分は常に正しいと思っている
- 自分には甘く、他人には厳しい
- 他人の間違いやミスを許せない
- 責任を他人に転嫁しがち
- 独占欲・支配欲が強い
- 自分より弱い立場の相手には攻撃的である
- 機嫌が悪いと明らかに態度や言葉に出る
モラハラをしやすい人の大きな特徴と言えるのが「強い自己愛」。自分のことが何より大切なため、他人を傷付けてしまったり、傷付けていることすら気が付かなかったりするのです。
ただ、こういった行為をする裏側には、強いコンプレックスや幼少期に受けた愛情不足が原因となって潜んでいるとも考えられているのです。
自分で気づいて治すことが必要ですが、難しいかもしれません。
モラハラのターゲットになりやすい人の特徴とは?自分に自信を持つことも大切
では逆に、モラハラ被害を受けやすい人の特徴を挙げていきます。
- 自分に自信がない、自己評価が低い
- 謙虚である
- 真面目でおとなしい
- 相手が間違っていると思っても言い返せない
- 常に他人の顔色を伺ってしまう
- 忍耐力が強い
- 人のことより他人を優先しがち
加害者となる人が、他人に責任を押し付けたりミスを責めたりするのに対し、被害者となる人は「自分に悪いところがあったんだ」と素直に受け取ってしまう傾向にあります。
もしくは、自分が正しいと思っても言い返すことができず、我慢しているうちに自分の意見を言わずに諦めるのが習慣になり、それがまた相手の態度を増長させてしまうという悪循環に。
人から強く当たられやすい人は、自尊心を高める努力をしたり、相手に遠慮して屈することなく自分の意見を主張したりすることで、事態を改善できる可能性があります。
他人と比較せず、自分はこのままで価値のある人間だということに自信を持ちましょう。
自分がどうしたいか、どうありたいかを考えて行動するようにしてみてください。
モラハラ被害を受けたらどうすればいい?選択肢は6つ
では、自分が職場でモラハラにあっていると思った場合、どうすればいいのでしょうか。
選択肢は6つあります。
- 何もせずに耐える
- 周囲の人に相談する
- 社内窓口や人事担当者に相談する
- 社外の窓口に相談する
- 転職する
- 裁判で訴える
ただし、「何もせずに耐える」、「裁判で訴える」のは、どちらもおすすめできません。
「何もしないこと」をおすすめできる状況があるとしたら、それはモラハラの加害者が転勤や定年退職などで職場から近々いなくなる見込みがある場合のみ。
ハラスメントにあっても我慢してしまう人が多いですが、精神的な苦痛はどんどん蓄積されていくもの。うつや自殺願望など、追い詰められてしまう可能性も高いです。
せめて、自分が嫌だと思っていることを相手に知らせたり、遠慮せず自分の意見を伝えるなどして、屈せず抵抗してみましょう。
周りの理解や協力があれば、事態は改善できるかもしれないんです。
悪いのは明らかに相手側なんだから、法で罰してもらえばいいのよ。
モラハラが事実かどうかは被害者が立証しなくてはいけないですし、認めてもらうのも簡単ではありません。
精神的に追い詰められて自分を失ってしまったり、恨みや怒りの感情に支配されてしまったりする前に、誰かに相談して解決策を探すか、あるいは転職で環境を変えるのがおすすめです。
モラハラ被害は1人で悩まず相談を!相談窓口一覧も紹介
モラハラを誰に相談するか、それも大きな問題ですよね。
まずは社内でも社外でも、相談できる相手がいれば話してみましょう。話すことで心が軽くなったり、解決のヒントがもらえたりします。
味方は1人でも心強いですし、理解者が職場に増えていけば相手もおとなしくなる可能性があります。
相談したことが悪い方向に広まると、状況が悪化するおそれもあります。
身近な人以外では、次のような相談窓口を利用するのがおすすめです。
ある程度の規模の会社であれば、社内のハラスメント防止のために窓口を設置しているところが多いです。プライバシーにも配慮されているはず。
ただ、会社によっては相談窓口といっても形だけで、話が加害者本人に筒抜けだったり、配慮があまりされない可能性もあるので要注意です。
社内の相談窓口が利用できない場合は、社外の相談窓口を利用しましょう。
モラハラなど職場でのトラブルや悩みを相談できる窓口は、次のようなところにあります。
窓口 | 概要 |
---|---|
かいけつサポート (認証紛争解決サービス) |
法務省の基準をクリアした窓口の紹介 (うち職場のモラハラに関するもの) |
全国の労働相談コーナー (都道府県の労働局) |
・労働局長からの指導や助言、専門家による解決のあっせん |
みんなの人権110番 (全国共通人権相談ダイヤル) |
・法務局の職員または人権擁護委員が相談にのってくれる
・人権を侵害されている人への救済措置を行う(相手への聴取や改善要請など) ・法務局窓口やインターネットでも相談可能 |
法テラス (日本司法支援センター) |
・トラブル解決に必要な法律などに関する情報提供、具体的窓口の紹介など
・場合によっては弁護士や司法書士費用の立て替えも |
いずれも相談は無料ですが、相談だけでなく弁護士や社労士などによる手続きに入った場合は有料となるので、費用についてはその都度確認するようにしてください。
先輩からの侮辱発言に悩んでいた人が労働局に相談をし、労働局から会社に助言をした結果、その先輩とは別の部署に異動する希望が叶った、といったケースもあるんです。
裁判に持ち込む前に、会社による改善や和解ができないか相談してみてください。
相談するときには、第三者にモラハラの実態をわかってもらえるよう、証拠を残しておくのがおすすめです。
訴訟などの手続きをするにも、証拠集めが重要なカギとなります。
モラハラ被害を社内・社外に相談するときに必要なこと
実態を知らない人に「モラハラを受けていて辛い」と言っても、具体的に何が起きているのかがわからなければ、「大したことない」「気のせい」などと事態を軽く見られてしまいます。
メモに書き留めたり、音声を録音したりして、有効な証拠を残しましょう。
証拠には、次のような内容が必要です。
- いつ(◯年◯月◯日の◯時ごろ)
- どこで(被害にあった場所)
- 誰に(加害者の氏名)
- 何をされたか、言われたか(被害の内容)
- そうなった原因や理由(発言や言動の背景)
- 目撃者や同席者の有無、その氏名など
- その時の気持ち(怖かった、つらかったなど)
- 心身の状態(体調や食欲、睡眠など)
なるべく具体的に、細かく記録することがポイント。手書きで残すのがおすすめです。
メールやLINEのやり取りなどがあれば、消さずに保存しておきます。
音声は有効な証拠になり得ますが、そのためにわざと何かを言わせるよう仕向けたりするのは厳禁。
モラハラによる体調不良などで医師に診てもらった場合は、診断書(有料)をもらっておくこともおすすめです。
証拠がなければ、その事実がなかったことになる可能性も高いんですよ。
モラハラは罪に問われる可能性あり!関係する法律とは
先述のとおり、モラハラをすぐに裁判沙汰にするのはおすすめできません。
ただ、自分だけでなく社会のためにも、と訴訟を考える人もいるでしょう。
しかしその程度や状況などによって、次のような法律に反する可能性があります。
対象 | 関連する法(カッコ内は罰則) |
---|---|
加害者本人 | ・刑法 第230条「名誉毀損」 (3年以下の懲役または禁錮または50万円以下の罰金) ・刑法 第231条「侮辱」 ・民法 第709条 「不法行為」 ・民法 第710条 「財産以外の損害の賠償」 |
会社 | ・労働契約法 第5条「労働者の安全への配慮」 使用者は、労働者の生命や身体(心を含む)の安全への配慮をする義務がある →民法 第415条 「債務不履行による損害賠償」 ・民法 第715条 「使用者の責任」 |
裁判では「モラハラ」という名称は使われていませんが、「同僚によるいじめや嫌がらせが常軌を逸している」「上司の言動により精神障害を発症した」など、モラハラに該当するケースで損害賠償が認められた判例はいくつかあります。
他者の人格を傷つける行為には法的な責任も伴うことを、すべての人が理解してほしいですね。
「相談するのも煩わしい」「早くこの環境から抜け出したい」という人は、転職を視野に入れるのもおすすめです。
ただし、なるべく在職中に転職活動をはじめ、次の職場を決めてから退職するのが精神的にも経済的にも安心です。
転職サイトやエージェントを上手く利用して、働きやすい職場を探しましょう。
モラハラかもと感じたら自分を責めずに相談を!
無視や人格の否定など、態度や言葉で精神的苦痛を与えるモラル・ハラスメント。
周りからは気づかれないことも多く、被害者自身も自分を責めてしまいがちなので、ほうっておくと被害者がどんどん精神的に追い詰められる可能性が高いです。
もし自分のミスによってなされた言動であっても、存在や人格まで否定される理由にはなりません。
自分を責めたり一人で傷ついたりせず、誰かに相談してみてください。
身近に相談相手がいなければ、社内の窓口、社外の窓口もあります。
環境を変えるために、転職を考えるのも1つの方法ですよ。
心が疲れ切ってしまう前に、ぜひ対処をしてください。
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