パワハラで退職を考える人に知っておいてもらいたいことを解説
パワハラに悩まされ、やむなく退職する人もいます。また、辞める意思がないのに会社から退職を強要され、言われるままに退職して泣き寝入りしてしまう人も。
執拗な退職の強要もまた、パワハラだと言えます。
仕事上の立場を利用した暴言や暴力・無視など、「業務上必要な指導」とは言えない行為が当てはまります。
パワハラの証拠集めや周囲への相談、退職届を書くときの注意点など、パワハラ被害者が知っておくべき情報が書いてありますよ。
パワハラの客観的・具体的な証拠を必ず残しておこう
パワハラが横行する職場で働くのは苦痛でしかありません。「辞めたい」と思うのも当然ですよね。
「パワハラ」とひと口に言ってもその内容はさまざまですが、主に6つのパターンがあります。
次に挙げるようなパワハラの被害にあっているなら、退職する・しないにかかわらず「証拠」を残しましょう。
パワハラの類型 | 例 |
---|---|
身体的な攻撃 | 物を投げつける、殴るなどの暴行を受ける |
精神的な攻撃 | 同僚の前で「無能」「給料泥棒」などと罵倒される |
人間関係からの切り離し | 話しかけても無視され、相手にしてもらえない |
過大な要求 | 達成不可能なノルマを与えられる |
過小な要求 | 単純作業ばかりを大量に強要される |
個の侵害 | プライベートについてしつこく聞かれる |
社内・社外の相談窓口を利用するためにも、退職時に起こるかもしれないトラブルに対処するためにも、第三者にパワハラの具体的な日時や内容を知ってもらう必要があるのです。
- パワハラを受けている場面を録画・録音する
- 届いたメールの文面をプリントアウトしておく
- パワハラの詳細を日記やノートなどに記録する
- 会社内の相談窓口を利用して、相談履歴を残す
- 心身に症状が出た場合、医療機関で診断書やカルテに記載してもらう
- 同僚などパワハラの目撃者に証人となってもらう
スマートフォンの録画・録音機能やICレコーダーなどを利用するとよいでしょう。
しかし突然のことだったり、普段から行動を監視されていたりして録音などが困難な場合もあります。その場合は他の方法で証拠を集めましょう。
間接的な証拠でも、総合的にパワハラの証拠にできる可能性があるのです。
しかし、会話の内容は着信履歴ではわかりません。
録音したりノートに書き留めるなどで残す必要がありますね。
裁判などの場合、集めた記録が立証材料として認められるか、判断材料として採用されるかは担当の裁判官次第です。
そのため、証拠を集める際は次の2つの点に気をつけてください。
- 証拠はなるべく多く集める
- 誰にでもわかるよう、詳細に記録する
ノートなどの記録は「何年何月何日」「誰に」「どこで」「どんなことを言われたか」「何をされたのか」など具体的に、誰にでもわかる内容にしてください。
パワハラはひとりでは解決不能!悩んだら誰に相談すればいい?
パワハラは自分ひとりで解決できるものではありません。
パワハラの苦しみをひとりで抱え込んでしまうと、ますます辛くなってしまいます。
家族や友人に相談したり、愚痴を聞いてもらうだけでも多少ストレスは和らぎますよ。
社内にパワハラや職場環境に関する相談窓口があれば、利用してみましょう。
なかにはパワハラを防止する委員会の中に、加害者がいる場合も。
その場合は社内窓口に相談してもパワハラがなくなるどころか、相談したことが知られて悪化するおそれがあります。
社内の相談窓口の場合、表向きは秘密厳守とされています。でも「人の口に戸は立てられぬ」という言葉どおり、社内で筒抜けになることもあるのです。
社内窓口の人間が信用できない場合は、社外の相談窓口を利用しましょう。
- 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局)
- 個別労働紛争をあっせんする都道府県庁の労働委員会・都道府県庁
- 法テラス(日本司法支援センター)
- みんなの人権110番
- かいけつサポート
パワハラの対処法やこれらの相談窓口の内容について、詳しくは次の記事をご覧ください。
「上司からの指導が厳しすぎる気がする」「部下に無視される」など「これってパワハラかも?」と思い当たる人は、こちらの記事も読んでみてください。
退職届の書き方と注意点【パワハラが原因で退職する場合】
上司によるパワハラで業務に著しい支障があったり、精神的に強いストレス状態が続いたりすれば、退職も考えざるを得ません。ただし、退職届に記載する文面には注意が必要です。
パワハラ退職が悔しいなら、退職届に「一身上の都合」とは書かないことをおすすめします。
退職理由として退職届に書くことの多い「一身上の都合により」という言葉は、「会社とは関係のない個人的事情により」という意味。
パワハラで職場の上司に嫌がらせなどを受けて働き続けられなくなったのに、「個人的な事情」で納得できますか?
自己都合による退職と会社都合による退職では、離職後に受け取れる失業保険の受け取りに差が出てしまいます。
自己都合退職 | 会社都合退職 | |
---|---|---|
手当支給までの期間 | 待機期間7日+給付期限3カ月 | 待機期間7日 |
給付日数 | 90~150日 | 90~330日 |
失業手当の給付日数は勤続年数によって異なりますが、20年以上勤務した場合、自己都合退職と会社都合退職では、給付日数に180日もの差があるのです。
自己都合退職と会社都合退職の違いについて詳しく知りたい人は、次の記事も読んでみてください。
企業によってはパワハラによる退職を会社都合だと認めず、「一身上の都合により」としなければ退職届を受け取らないケースもあります。
パワハラが原因で「仕事を辞めたい」となかなか言い出せない人は、次の記事も参考にしてみてください。
パワハラによる退職を「会社都合退職」にする方法
「パワハラで退職するのに自己都合退職になるなんて悔しい!」という人に、パワハラでの退職理由を「会社都合」にする2つの方法を紹介します。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
「会社都合による退職」とした退職届を内容証明郵便で出す
退職届を「自己都合による退職」としないと会社側に受け取ってもらえず、自分が折れることにはどうしても納得がいかない場合はどうしたらよいでしょうか。
退職届を受け取ってもらう最後の手段として、退職理由を会社都合としたまま「郵便局の内容証明※」で送る方法があります。
一般書留郵便物の1つ。「いつ・どんな内容の文書」を「誰から誰に」送られたかの証明となる。
内容証明郵便を使えば「会社側が退職届を受け取った」という証拠が残ります。
退職日については就業規則で会社ごとの決まりがあるので、それに従ってください。
法律上は、労働者が退職を申し出た日から14日間が経過すれば労働契約は終了します。
「突然休んでそのまま退職する」というのは社会人として避けたい行動です。
また、会社都合による退職だと記載された退職届を受け取っても、企業によっては「自己都合による退職」でハローワークに届け出る可能性もあります。
退職後、ハローワークで「自己都合による退職」に異議を唱える
自分の意思に反して「一身上の都合」と退職届に書いてしまった人にも、会社都合の退職に変更できる可能性があります。
会社が勝手に自己都合退職としてハローワークに届けてしまったという場合も同じです。
退職後に離職票を受け取ったら、「離職票-2」に記載の「離職理由」をチェックしましょう。
最下部に「記載された離職理由に異議があるかどうか」を確認する欄があります。
「自己都合による退職」に納得できない人は、異議「有り」に◯を付けて会社都合による退職であると主張しましょう。
ハローワークの窓口で事情を説明し、最初の章で紹介したパワハラの証拠も提示してください。
事実を証明できないと異議を認めてもらえない可能性があります。
退職を強要するのもパワハラ!辞めたくないのに応じる必要はない
そしたら「我慢できないならすぐ辞めろ、退職届を出せ」って言われちゃって・・・。
会社から退職を迫られても、辞める意思がないのなら承諾する必要はありません。
企業の業績悪化などによる人員削減のため、企業側が金銭などの補償条件などを提示して労働者に退職を促すことがあります。
それを「退職勧奨」といいます。
通常の退職勧奨は、従業員が同意のうえで退職するため問題とはなりません。
しかし半ば強制的に退職させられるケースもあり、たびたび裁判沙汰となっています。
退職の強要はパワハラに値するだけでなく、「違法な退職勧奨」と見なされることもあるのです。
法律上、違法な退職勧奨と判断されるのは「客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」もの。
どういうケースが当てはまるのか、実際に損害賠償の支払いが認められた1件の裁判事例を紹介します。
・複数の上司から「能力がない」「寄生虫みたい」「新入生以下のレベル」などと言われた。
・本人との面談の際に上司が大声を出したり、机を叩いたりした。
・本人が拒否したにもかかわらず上司が家を訪れたり、家族に会って説得するよう頼むなどした。
これは実際に行われた言動の一部ですが、事実を総合的に判断した結果、違法な退職勧奨であると認められました。
会社から何度も執拗に退職を迫られるような場合は、その面談などの具体的な内容を、最初の章でもお伝えした音声録音やメモ書きなどで記録しておきましょう。
「退職を強要された」として損害賠償請求をする場合、社会通念上「退職勧奨」の範囲を超えた退職の促し方だったと裁判官に認めてもらわなくてはなりません。
そのためには証拠が不可欠なのです。
パワハラで取り返しがつかなくなる前に、転職も考えよう
パワハラによるストレスで精神的に追い詰められ、出社拒否になってしまう人もいます。
精神的・身体的に病んで働けなくなってしまう前に、転職を考えることをおすすめします。
「大げさに言っているだけじゃないのか」と疑われるだけでなく、「本人に何か問題があるのではないか」と勘ぐられてしまうかもしれません。
退職理由は前職場のせいにせず、ポジティブに変換して伝えましょう。
採用担当者が本当に知りたいのは、この先長く勤める意欲や経験・スキル、人間性が会社に合うか、ということ。
それを踏まえたポジティブな退職理由を伝えるのがベストです。
退職理由をポジティブに変換する方法は、次の記事で紹介しています。
パワハラの証拠を残そう!改善されないなら転職も視野に
自分が受けたパワハラを「指導の範囲を超えた行為」だと第三者にも認めてもらうためには、証拠が必要です。
辞めたくないのにしつこく退職を迫られるのも、パワハラである可能性があります。面談などの内容を記録し、証拠を残してください。
自己都合退職に納得できない人は、退職届には「一身上の都合」とせず、会社都合による退職だと認めてもらうのがベストです。
会社が拒否する場合は、退職後に異議を申し立てたり、内容証明郵便で一方的に退職届を送るという手もあります。
心身ともに疲弊し働けなくなってしまう前に、転職も視野に入れてみてくださいね。
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